Art of Noise – Who’s Afraid of the Art of Noise? (1984)

イギリスのアヴァンギャルド・シンセポップ・グループ、アート・オブ・ノイズ Art of Noise による1984年の1stアルバム。

これ、めちゃくちゃ斬新な作品ですね。シーケンサーとサンプラーを利用した、いわゆる打ち込みの本格的な作品としては最初期のものなのではないでしょうか。であるにも関わらず、今聴いてもまったく古さを感じさせません。

打ち込みの音楽の草分け的存在というと、ドイツにクラフトワーク Kraftwerk がいますね。1984年の本作と近い時期の作品を参照してみると、「コンピューター・ワールド Computer World」が1981年、「エレクトリック・カフェ Electric Cafe」が1986年です。

興味深いのは、クラフトワークがシンセサイザーの黎明期から常に「シンセサイザーという楽器の限界」を試してきたように見えるのに対して、このアート・オブ・ノイズの本作は、機材の制約というものをそのサウンドから微塵も感じさせないことです。実際にはさまざまな制約や困難があったんでしょうけど、本当に自由に音楽を表現しているように見えるんですね。これはすごいことです。ある面ではあのテクノ・ゴッドのクラフトワークの先を行っているようにすら見える部分がある。

曲単位で見ると、「Beat Box (Diversion One)」のような強烈なビートの曲が非常に強く主張してきますね。メロディアスなベースの打ち込みとオーケストラ・ヒットの音色が魅力的です。「Close (To the Edit)」も似た傾向の曲です。一方で「Moments in Love」のような静かな曲もありますね。

グループは次作、「イン・ヴィジブル・サイレンス In Visible Silence」(1986) にてサウンドの面でさらなる進化を見せています。つくづくすごいグループだと思います。