入門編: King Crimson の名盤を探る

プログレッシヴ・ロックの先駆者であり、またその分野を代表するイギリスのバンド、キング・クリムゾン King Crimson。ギターのロバート・フリップ Robert Fripp を中心としたグループです。彼らの名盤を探ってみましょう。

In The Court Of The Crimson King (1969)

1969年の1stです。邦題は「クリムゾン・キングの宮殿」。

これ、まだ1970年代に入ってないんですね。一般的にプログレッシヴ・ロックというムーヴメントが花開いたのは70年代に入ってからです。いわゆるスーパーグループ(既にキャリアと知名度を持ったミュージシャンたちが集まったグループ)でもなく、ファーストアルバムで、しかもこの時代にこれだけのクオリティのアルバムを作ってしまったわけですから、彼らの存在がいかに突出したものであったのかが分かります。

ヴォーカルとベースはのちにエマーソン・レイク・アンド・パーマー Emerson, Lake & Palmer を結成するグレッグ・レイクです。当然ヴォーカルは上手いんですが、このアルバムはインストの側面が比較的強いですね。1曲目「21st Century Schizoid Man」からホーン・セクションが非常に強烈です。

2〜4曲目は静かでダークなトーンの、それでいてドラマチックな楽曲が続きます。ラストの5曲目「The Court Of The Crimson King」は最もドラマチックですね。

キング・クリムゾンを知りたいという方は、まずこの1stから入ってみるのがよいのではないでしょうか。

Larks’ Tongues in Aspic (1973)

1973年の5thです。邦題は「太陽と戦慄」。

タイトル曲「Larks’ Tongues in Aspic, Part One」「Part Two」がアルバムの冒頭と最後に配置されており、この曲だけで20分少々ある大作です。いわゆるプログレのバンドの中でも、キング・クリムゾンはそこまで長尺の曲を作らない印象がありますが、この作品は例外的です。他にも7分台の長尺の曲が続きます。

サウンドを見てみると、なかなか前衛的ですね。とっつきやすさで言うと他の作品に一歩譲るかもしれません。1曲目の「Larks’ Tongues in Aspic, Part One」はインストで、ヴァイオリンとパーカッションの音色が目立ちます。ギターパートがメインとなる部分からは即興演奏でしょうか。

2曲目の「Book of Saturday」などヴォーカル曲もありますが、メロディの輪郭は曖昧です。4曲目の「Easy Money」は日本でCMソングに起用されたりもしたようですが、大衆向けのポップさとは対極にある気がします。

前衛的な作品、即興演奏の作品が好きな方はこの作品から手をつけてみるのもいいかもしれません。

Red (1974)

1974年の7th。ゲストミュージシャンを除くとトリオ編成だった時代の作品です。

これはストレートにカッコいい作品ですね。冒頭のタイトル曲「Red」はギターリフでぐいぐい引っ張っていく作品です。2曲目「Fallen Angel」もメロディの美しい曲。先に挙げた「太陽と戦慄」と比較すると、随分聴きやすくなっているのではないでしょうか。

3曲目の「One More Red Nightmare」も素晴らしいロック・ナンバー。しかしサウンドには実験的な面もけっこうありますね。その辺りのバランスの取り方はさすがだと言えます。

キング・クリムゾンの1枚目としては、本作は実はいちばんおすすめできるかもしれません。歴史的な意味合いも含めると1stの存在感は大きいですが、とっつきやすさからすると本作のほうが上かもしれないですね。

Discipline (1981)

1981年の8th。エイドリアン・ブリュー Adrian Belew (Vo, Gt) とトニー・レヴィン Tony Levin (Ba) が参加したことで知られるアルバムです。

前作までとはかなり趣の異なるサウンドとなっており、この時期のバンドは「ディシプリン・クリムゾン」などと呼ばれることもあるようです。エイドリアンとトニーという2人の強い個性を持ったメンバーがサウンドを方向付けています。

1曲目「Elephant Talk」はものすごい曲です。エイドリアンがエレキギターでゾウの鳴き声のような音を出すパートが強烈で、歌詞の面でも1stで見せたような詩的な世界から打って変わって、ここでは特定のアルファベットから始まる単語を単に並べて見せるといった言葉遊びになっています。

ここでベースのトニーが弾いているのは正確にはチャップマンスティック Chapman Stick という楽器で、通常のギター類のように指やピックで弦を弾く替わりに、フレットのついた指板に弦を叩きつけるようにして演奏します。ご存知ない方は You Tube 等で動画を検索してみるとよいでしょう。

それまでのキング・クリムゾンのイメージを徹底的に打ち壊した問題作ですが、彼らの傑作のひとつでもあります。彼らの作品を1、2枚聴いたあとに本作を聴いてみるのがベストなのではないでしょうか。