入門編: Devo の名盤を探る

アメリカのニューウェイヴ/シンセポップ・バンド、ディーヴォ Devo。我々人類は進化しているのではなく「退化 De-Evolution」した存在だと主張する、特異なコンセプトのバンドです。

中心人物は マーク・マザーズボウ Mark Mothersbaugh (Vo) と、ジェリーことジェラルド・キャセール Gerald Casale (Vo, Ba)。二人は大学のアート系の学部で知り合ったそうで、プロモーションビデオなどのヴィジュアル面も彼ら自身が手がけています。

本国アメリカでも非常に影響力の強かったバンドで、意外にもニルヴァーナ Nirvana やサウンドガーデン Soundgarden といったグランジ勢、またレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン Rage Against The Machine などといった有名どころが彼らの曲をカヴァーしています。

ここではそんなディーヴォの名盤を3枚セレクトしてみました。

Freedom of Choice (1980)

1980年の3rd。前作までの1st、2ndはパンク色が強かった彼らですが、このアルバムからシンセポップの側面が強くなります。1曲目「Girl U Want」から非常にポップです。

3曲目「Whip It」はシングルヒットもした彼らの代表曲で、シンセベースの音色が印象的です。この曲ではキーボードソロで「ミの音を変わらないリズムで7回鳴らすだけ」というポップソングにしては先鋭的すぎることをやっています。これも「退化」なのでしょうか。

6曲目「Freedom of Choice」は歌詞がなかなか示唆的で、「Freedom of choice is what you got / Freedom from choice is what you want(選択の自由は君が得たもの、選択からの自由が君が求めるもの)」と歌います。7曲目「Gates of Steel」、12曲目「Planet Earth」などもシンセポップの名曲と言えるでしょう。

Oh, No! It’s Devo (1982)

1982年の5th。これもシンセポップの名盤で、彼らの音楽性が円熟してきた頃の作品です。

1曲目「Time Out For Fun」はエレクトリック・ドラムの響きが強調されたオープニング曲。2曲目「Peek-A-Boo」は「いないいないばあ」の意味で、彼らの奇妙なセンスが炸裂している名曲です。

5曲目「That’s Good」、7曲「Big Mess」なども優れたポップソングです。しかしこのアルバム、ポップであると同時にその影に物悲しいトーンが見え隠れするように思えてなりません。9曲目「What I Must Do」などに顕著な気がします。

Something For Everybody (2010)

長期の活動休止期間を挟んでリリースされた、2010年の9th。復活作です。

サウンドはやはり時代の変化で現代的になっていますが、彼らの優れたポップセンスは何も変わっていません。このアルバムは特にソングライティングの面で優れた作品と言えるのではないでしょうか。

1曲目「Fresh」からタイトルが高らかに復活を宣言しているように思えます。2曲目の「What We Do」で「What we do is what we do / It’s all the same, there’s nothing new(我々がするのは我々がすること / まったく同じ、何も新しいことはない)」と歌っているのは彼らなりのユーモアでしょう。

5曲目「Human Rocket」は加工されたヴォーカルによる疾走感のあるナンバー。8曲目「Step Up」でやや憂いを帯びたメロディになったと思うと、ラストの10曲目〜12曲目には「Later Is Now」「No Place Like Home」「March On」と感動的とも言える名曲が並びます。

おわりに

ここでは紹介できませんでしたが、1stの「Q:Are We Not Men? A:We Are DEVO!」(1978年)はニューウェイヴ史に残る名盤と呼ばれていますし、2ndの「Duty Now for the Future」(1979年)などはパンクの名盤と言えると思います。

また「Oh, No! It’s Devo」が気に入られた方には、6thの「Shout」(1984年)なども名盤として映るでしょう。

聴きやすいながらも強烈な個性を持つ彼らのサウンド。メインで紹介した3枚のアルバムが気に入られたら、ぜひ他のアルバムにも手を伸ばしてみることをおすすめします。