入門編: Kraftwerk の名盤を探る

ドイツのテクノ・ゴッド、クラフトワーク Kraftwerk。電子音楽の分野の草分けで、常にシンセサイザーといった楽器の限界に挑戦しながらその表現を深めてきました。

中心人物はラルフ・ヒュッター Ralf Hütter とフローリアン・シュナイダー Florian Schneider の2人で、たびたびメンバーチェンジを行いながら主に4人編成で活動していました。

そんな彼らの名盤を3枚、セレクトしてみました。まずはここから聴いてみるのがよいでしょう。

THE MIX (1991)

クラフトワークの活動時期を便宜的に分けると、3つの時代に分けられます。第1期は実験音楽の側面が強く、音源が正式にCD化されていないデビュー直後の1971年-73年。第2期はテクノ・クラシックとなるアルバムを次々と発表した1974年-86年。第3期は現代的な機材を導入した1991年以降です。

本作「THE MIX」は第3期の幕開けとなる1991年のアルバムで、テクノ・クラシック時代にリリースした数々の名曲を現代の機材でリメイクした、いわば彼らの公式ベスト盤とも呼べるものです。アレンジはダンサンブルなものへと変更されている曲が多く、非常に聴きやすいアルバムです。

曲目は「The Robots」「Pocket Calculator」「Autobahn」「Radioactivity」「Trans Europe Express」などと、彼らが一貫してテーマとしてきたテクノロジーと工業の進化に関する曲が多いです。

「Dentaku」は「Pocket Calculator」の日本語版。クラフトワークはこうした外国語で歌うバージョンの曲をしばしばリリースしています。「Trans Europe Express」から続く計3曲は鉄道をテーマにした曲で、線路を走る音や連結器のガシャンという音が音楽的に巧妙に織り込まれており、インダストリアルな名曲です。アルバム最後の「Music Non Stop」はサンプリングされたボイスによるダンサンブルな曲で、彼らのライブではラストの曲としてお馴染みです。

Tour de France (2003)

2003年のアルバムで、オリジナル・アルバムとしては2021年現在で最後の作品となります。元々のタイトルは「Tour de France Soundtracks」でしたが、リマスターにあたって現在のタイトルへ変更されました。

デビューから30年以上を経過し、シンセサイザー等のテクノロジーも大幅に進化した中、最新の機材で彼らの実力を見せつけてくれた傑作です。タイトルとなったツール・ド・フランスとは、フランスとその周辺国を舞台に行われる100年以上の伝統を持つ自転車ロードレースのことです。

前半の「Prologue」〜「Chrono」の5曲はアルバムのメインテーマとなる20分弱の組曲。シンセと打ち込みのドラムの音が非常に気持ちいいです。そしてゆるやかなノリの「Vitamin」、ダンストラックと言える「Aéro Dynamik」など名曲が続きます。全12曲で56分、全体が統一されたトーンでよくまとめられた作品です。

Minimum-Maximum (2005)

世界各国で行われたツアーの様子を収めた、2005年のライブ盤。DVDの映像作品としてもリリースされました。彼らのライブは音と映像がダイナミックにリンクしているので、これはぜひDVDでチェックしてほしいですね。

選曲は先述の「THE MIX」「Tour de France」を中心に、その他の「THE MIX」に入り切らなかったであろう名曲が数多く含まれています。

「The Man-Machine」「The Model」「Neon Lights」など、彼らの名盤「The Man-Machine」(1978)からの選曲が多いですね。「Planet of Vision」は2000年に行われたドイツのハノーヴァー万国博覧会のテーマソングのリミックス。

さまざまな国の言語で数字を読み上げる「Numbers」も「THE MIX」には収録されなかった彼らの名曲です。「Dentaku」は日本の東京でのライブテイクが収録されており、観客の盛り上がりと大合唱が入っているのも面白いです。

全22曲で2時間1分の大ボリュームで、彼らのキャリアの総まとめとも言える素晴らしいライブアルバムです。

おわりに

彼らの名盤について、ライヴ盤を含めて紹介してみました。テクノ・クラシックである「THE MIX以前」のアルバムを紹介しないとはどういうことだ! と熱心なファンから石が飛んで来そうですね。

しかし、ここで挙げた3枚さえ聴いておけば、あとは気に入った曲から過去の名作を辿ることは可能です。どれも聴きやすく、それでいて奥深い作品ばかりですから、この機会にぜひテクノ・ゴッドのクラフトワークについてチェックしてみてくださいね。