発達障害の二次障害によるうつ病とその対処

ASD(自閉症スペクトラム症)やADHD(注意欠陥・多動性障害)に代表される発達障害ですが、発達障害を抱えた成人には二次障害という更なる重荷を抱えた人が少なくありません。ここではそんな大人の発達障害の二次障害について書いてみたいと思います。

なおこの記事の筆者は精神科医療の専門家ではありませんが、ASD当事者であり、長年に渡り実際に二次障害に苦しめられてきたという点を付記しておきます。

二次障害はなぜ起こるのか

二次障害とはその字面のとおり、発達障害という一次的な(ベースとなる)障害に付随して、二次的に起きてきた障害のことを言います。代表的なものとしては、憂鬱感や意欲・思考力の低下、希死念慮(死にたいと思うこと)といった症状の出る「うつ病」があります。この記事では、代表的なケースとしてうつ病に絞って記述したいと思います。

ご存知のとおり、発達障害を抱えた人は社会生活を送る上でさまざまな困難にぶつかります。良好な対人関係を結ぶのが難しいこと、自らの疲労に気づかずに過集中(物事に過剰に集中・没頭)してしまうこと、周囲のさまざまな刺激に敏感なことなどです。こうした性質は「ふつうの社会生活」を送るだけでも、本人にとって過大な負担となることが珍しくありません。

一般的に、うつ病になる人が職業上の「働き過ぎ」によるものが多いことはよく知られているでしょう。発達障害を持つ人の生活は、「ふつうの生活」を送る上でのさまざまな困難から、頭と心を「働き過ぎ」の状態にせざるを得ないという事情があるのです。言い換えれば、発達障害の当事者は非常に「疲れやすい」のです。

職場にうまく馴染めない。人の言っていることの意図がよく読み取れずに苦労する。家事を段取りよく行うことができない。こうした日常生活での疲れやストレスが、溜まりに溜まって二次障害というものを引き起こすことがあるのです。

二次障害への対処の困難さ

一般にうつ病は「服薬と休養」で良くなると言われています。それは発達障害を持つ人にとっても間違いではありません。しかし、このうつ病という病気が「二次的なもの」であることを思い出してください。

発達障害を持たない人であれば、一次的な原因へのアプローチはさまざまな方法があるでしょう。職場の仕事量が過大だったのなら、仕事量を調整するよう会社の人事部・上司と相談する。ネガティブな考え方が主な原因と思われるのなら、認知行動療法などを受けてみる。職場が肌に合わないのなら、転職を考えてみるなどです。

しかし、発達障害の人が持つ一次的な原因は、生まれ持った脳そのものが抱えている性質であります。確かにSST(ソーシャルスキル・トレーニング)などによって、対人関係のスキルを後天的に身につけることはある程度まで可能でしょう。しかし、刺激への過敏さや他者の感情(集団の空気)の読み取りにくさなど、根本的な解決が難しい問題は数多くあります。

そのため、仕事を続ける上でうつ病で休職をしてしまい、服薬と休養でいったんは回復したものの、根本的な解決ができないために、職場に復帰してもまた体調を崩してしまう…といった具合に、二次障害の繰り返しを起こしてしまうケースが少なくないのです。

場合によってはそれで職を転々としてしまったり、状況が悪ければ働くことそのものを諦めてしまうという人もいるかもしれません。

経済面と自尊心

よほど財産に恵まれてでもいない限り、人は働かなければ生きてはいけません。生きていくにはお金が必要です。また、健康な人はあまり意識しないかもしれませんが、多くの人は働いて他者の役に立つことで健全な自尊心を維持しています。働くことの意味には「お金を得ること」とそこから「生きる意味を引き出すこと」、この二つがあるのです。

発達障害による二次障害で起こることは、それら二つの阻害、つまり経済的な困難自尊心の低下です。発達障害を抱えて生きる人は、お金と自尊心、この二つを得ることに非常に困難を覚えるわけです。

これは非常に難しい問題です。私はこれに対して単純明快な答えを持ち合わせていませんし、そのような解決策はおそらく存在しないでしょう。精神科医療や福祉の世界で、このような問題の解決に向けて努力を続けている方はたくさんいると思いますが、誰かが綺麗さっぱりとこの問題を片付けてくれることは、おそらく期待できないのです。

私たち発達障害の当事者は、自力でサバイバルしていく必要があります。厳しいですが、これが現実です。

ここより先は、発達障害の当事者がサバイバルしていく上で役に立つであろう知識について記述したいと思います。

他者の助けを得ること

まずはこれが第一です。あなたの家族、友人、職場の関係者、医療関係者、福祉関係者、考えられるあらゆる人に助けを求めてください。これは当事者にとって非常に難しい作業であることを私は理解しています。過剰に依存したり迷惑をかけたりするのではなく、社会人としての適切な距離感を持った上で、それでも助けを求めるのです

たとえば職場の人であれば、「仕事のこういう部分が辛い」といったことを何らかの方法で発信できないでしょうか。相談に乗ってくれそうな同僚はいませんか。あるいは、こういう考え方はできないでしょうか。「部下の仕事上の問題を解決するよう努めるのは上司の仕事の一部なのだから、上司に相談してみよう」と。

あなたのご両親はあなたの経済的な苦しみを知っているでしょうか。場合によっては、経済的な援助を引き受けてくれるかもしれません。ひょっとしたら、ご両親との関係がよくないでしょうか。それでも、一般的に親は子に対して何かしたいと思うものです。

信頼できる友達はいませんか。私は当事者ですから、「友達なんていない」と言われても別に驚きません。もし友達がいる方は、頼ってみてください。苦しいことがあったら相談してみてください。用事もないのにメールをするといったことは苦手でしょうか。苦手でも、やってみる価値はあります。人を助けようと思うのは人の自然な本能です。誰かがあなたを助けてくれる可能性があります

もしかしたらあなたは人間に対して絶望していないでしょうか。もしそうだとしたら、今が頑張るときです。人間を信じてください

さまざまな制度の利用

発達障害の当事者がこの社会をサバイバルしていく上で、さまざまな制度の利用もぜひとも行うべきことの一つです。残念ながら、ほとんどの福祉制度は困っている人に自動的に届けられるものではありません。自分で申請した人のみが受け取ることができます

障害者手帳はお持ちでしょうか。発達障害ないし二次障害で長く通院を行なっているようでしたら、主治医の先生が診断書を書いてくれる可能性があります。障害者手帳には、公共交通機関の無料パスなど、経済的負担を和らげてくれる制度が付随している場合があります。また就職にあたっては障害者雇用の採用枠を受けられるようになるため、職場から障害に配慮してもらいながら働くことができるようになるかもしれません。また失業保険の給付期間が長くなるなどのメリットもあります。

また精神科への通院では、自立支援医療制度というものがあります。通院した際に窓口で払う自己負担額が通常の3割から1割になるという制度です。通院期間が長い場合は、診断書を書いてもらえないか主治医の先生に相談してみるといいでしょう。

最後の手段として、障害年金という手段もあります。これは制度がかなり複雑なので、社会保険労務士に相談する必要が出てくるかもしれません。しかしどうしても経済的に立ち行かなくなった場合、障害年金でどうにか生活が繋がっていく可能性があります。こちらも医師の診断書が必要になる制度なので、主治医の先生に障害年金が受給できそうか相談してみるとよいでしょう。

おわりに

発達障害を抱えながら生きていくということは本当に困難なことです。しかし、絶望しないで生きていきましょう。

私たちは多くのものを奪われて生きているように感じるかもしれませんが、人として幸せに生きること自体を奪われてしまったわけでは決してありません。生きていきましょう