わかりやすい投資の仕組み – 投資家の仕事とは

投資家の仕事とはいったい何なのでしょうか? たとえば我々がどこかの会社の株を買ってしばらく保有して、のちにそれを売却するとき、我々は「何もしていないのに」利益や損失が出ます。

この世には「タダ飯(フリーランチ)」というものは基本的にありえません。投資家が利益を出すということは、投資家は何か仕事をしているのです。その仕事とは一体何なのでしょうか?

航海時代のたとえ

よく使われるのが、航海という事業のたとえです。その昔、安全な航空機なども存在しなかった時代、他の大陸にある貴重な金や塩などの資源を手に入れるためには、危険な船による旅が必要でした。

莫大な金額で船を建造し、危険な仕事を行う船員を雇っても、船が大嵐に遭うなどすれば、その航海は失敗するかもしれないのです。これはひとりの人間が出資してリスクを負うにはあまりにも大きなものです。

そこで出てきたのが分担の考え方です。船の建造等、事業にかかる費用を複数の出資者に分担してもらうのです。この分担には次の二つのものがついてきます。

一つ目はリターンで、事業が成功すればそこから出た利益を受け取れるという権利です。二つ目はリスクで、事業が失敗したときは出資した金額はそのまま損してしまうという責任です。

リスクとリターンは必ずセットです。もうお分かりですね。投資家の仕事は、万が一の場合の損を引き受けるという役割なのです。

実際には、この投資家の権利は「時価」で人から人へと売買されています。事業が成功する見込みが高まれば、損する可能性は低くなるので時価は上がるでしょう。逆に大嵐のニュースなどが入ろうものなら、損する可能性が高まったということで時価は下がるでしょう。これがふつうに我々が見ている「株価」というものです。

人は不確実性を避ける

言うまでもないことですが、人は不確実であるということを避けたがります。確実な利益が欲しいのです。

ある程度のまとまった利益が手に入る見込みがないと、このような事業に出資しようという人は現れないでしょう。ですから事業主は成功したときの分け前、つまりリターンを用意します。一般的にこれが「配当金」などと言われるものです。

投資家はリスクとリターンを天秤にかけます。そして合理的だと判断したなら、そこへ出資するでしょう。次の投資家の仕事は、損をするという恐怖に耐えることです。

事業の状況は日々刻々と変わり、時価である株価もまた日々変化することでしょう。投資家は可能な限りの冷静さを持って、状況判断に当たらなければなりません。

株価が合理的な価格を上回っていると思えば、投資家はその株を売却するでしょう。株価が合理的な価格を下回ってると思えば、投資家はその株を追加で買い増すかもしれません。あるいは、株価があまりにも自分の予想する範囲を下回ってしまって、自分の判断を撤回してその株を売却するかもしれません。

こうした判断はすべて、投資家にとっては「もしかしたら損をするのではないか」という恐怖との戦いなのです。

おわりに

以上をまとめると、投資家の仕事は「損をすること」と「その恐怖に耐えること」となるでしょう。航海のたとえ話が、株式投資というものの理解の助けになったのなら幸いです。

私たち個人投資家も、常々このマインドを忘れることなく、冷静な投資を行いたいものですね。