楽器の練習が続かない人へ: 楽器を続けるコツ

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この記事は2021年に書かれたものです。その後、楽器を楽しんで続ける&効率よく上手くなるためのノウハウを体系的にまとめた書籍「社会人のための楽器の継続と上達の手引き:練習の習慣化から、音楽性を深めるまで」(Kindle版note版)を2024年2月に出版しました。この記事よりもずっと深い内容が書かれているので、ぜひチェックしてみてくださいね。note版では最初の2つの章が試し読みできるほか、おまけ記事の「制作ノート」もあります。

🐟 🐟 🐟 ここまで 🐟 🐟 🐟

私はコンサーティーナという蛇腹楽器を、かれこれ5年以上続けています。マイナーな楽器ですが、アコーディオンの仲間で、バンドネオンをさらに小型化したような楽器です。

5年以上というと、それなりに長い期間と言ってもよいでしょう。この記事では楽器が続かない人に向けて、楽器を続けるコツについて書いてみたいと思います。

楽器との相性がある

人と楽器には相性があります。これは同じ種類の楽器の違うメーカーだとかそういう意味ではなくて、ギターを選ぶかピアノを選ぶかといった楽器の種類そのものを指しています。

たとえば私は、20歳の頃にクラシックのピアノを1年ほど習っていました。元々音楽好きだったので、何か楽器を一つでもいいから身に付けたいと思ったからです。

しかし、私のピアノの趣味はそれほど長くは続きませんでした。社会人になってから何かと忙しくなり、だんだんと楽器に触らなくなってしまったのです。

他にもアコースティックギター、ウクレレなどに手を出してみたこともありましたが、こちらもそれほど長くは続きませんでした。

しかし、コンサーティーナは違いました。楽器を触っていて「これこそが自分の楽器だ!」というしっくりくる感じがあったのです。これはピアノやギターを触っていた頃にはなかった感覚です。つまり「私に向いていたのはアコーディオン系の蛇腹楽器だったのだ」ということがようやく分かったのです。

楽器の練習が続かないと思っているあなたは、もしかしたらまだ運命の楽器と出会う前なのかもしれません。

とりあえず楽器を持って外に出る

私はよく休日になると、楽器ケース片手に近所の川べりや住宅地から離れた公園などに行って、そこで練習をします。とりあえず外に出て、楽器を弾ける環境に身を置くのです。

これは科学的に明らかにされたことですが、人の脳というのは面白い仕組みを持っています。人というのは頭や身体を実際に動かしているとやる気が出てくるようになっているのです。やる気が出てきたらやろう、というのは実は間違いで、やる気というのは実際にやっているうちにじわじわと出てくるものなのです。

楽器を弾ける場所というのは都合よく家のすぐそばにあったりはしませんから、必然的に私は少し長い距離を歩くことになります。このウォーキングも、ひょっとしたら眠っているやる気スイッチを押すのに役立っているのかもしれません。

一度外へ出てきてしまったらしめたものです。楽器を持っていれば、せっかく来たのだから…と少しは弾く気になるはずです。なんとなく気分が乗らない日でも、明るいお日様の下で楽器を弾いていると、いつの間にか気分よく楽器を弾いている自分に気づいたりすることもあります。

人前での演奏機会を作る

私の弾いている音楽はアイルランドという国の伝統音楽で、この音楽にはセッションという文化があります。カフェやアイリッシュパブなどに月イチで集まって、みんなで合わせて楽器を弾くという集まりです。お客さんに聴かせるのが目的ではなく(もちろんその側面もあるのですが)、ただ参加者が楽しむために楽器を弾くのです。

ジャズなどをされている方は、このセッションという言葉を聞いたことがあるかもしれませんね。ジャズの世界にもセッションという文化があるからです。セッションのあるジャンルの音楽をやっている方は幸運です。どんどん人前に出ていきましょう。

それ以外の楽器、たとえばクラシックのピアノなどを習っている場合は、習っている教室が関係している演奏会、発表会などはないでしょうか。先生に訊いてみるとよいでしょう。まったく発表の機会のない楽器というのはそうそうないはずです。

また、カフェ等でオープンマイクというイベントを開催している場所があります。ステージとマイクを一般に開放して、楽器好きな人に人前で演奏してもらおうというイベントです。お近くの地名で検索してみるとよいでしょう。

ここでひとつ気をつけておくことがあります。「いつか上手くなったら」は永遠に来ません。まだそんなに上手じゃない、と思っていても、早いうちから人前に出て行くことをおすすめします。

もちろん「1曲をそれなりに間違えずに弾き切ることができる」といった最低ラインはあります。しかしそれ以上のレベルになったら、上手い下手はあまり気にせず人前に出て行くべきです。人前での本番という経験は、あなたの演奏レベルを確実に上げてくれます。

最初はおそらく、ものすごく緊張するでしょう。指先が震えるかもしれません。失敗して恥ずかしい思いを、悔しい思いをすることもあるでしょう。大丈夫です。今ものすごく上手に弾けるような人も、皆この段階を通過しています。

人と繋がる

同じ楽器をやっている人と繋がりましょう。これはモチベーションの維持にとても有効です。人が頑張っているのを見ると、自分も頑張ろうという気になります。セッションや発表会があるのなら、そこで出会った人と繋がるチャンスです。

現代は幸いにもSNSが発達しているので、遠く離れた人とも繋がることができます。Twitter等で楽器関係のアカウントを探してみるとよいでしょう。定期的に演奏動画をアップしている人などもいて、きっと面白い世界が広がっているはずです。

私が以前に書いた記事「大人になってからの友達の作り方」では、趣味で友人を作る大切さについて触れました。ひょっとしたらあなたも楽器という共通項を通じて、生涯にわたる大切な友人と出会えるかもしれません。

おわりに

ここまで書いてきたことは、すべて私自身の経験により確かめられたことです。もう一つ、私が確信を持って言えることがあります。楽器の存在はあなたの人生を驚くほど豊かにしてくれます。

この記事にたどり着いた人は、おそらく音楽が大好きで、しかし楽器を弾くこと自体はなかなか続かない、という悩みをお持ちの人が多いと思います。ここに書いたヒントをもとに、その状況が少しでもよい方向に行くことを願っています。

最後に一言。楽しんでいきましょう。では、楽しい音楽生活を!