私はアイルランドの伝統音楽を演奏するイングリッシュ・コンサーティーナ奏者です。今回は複数のコンサーティーナを購入した過程で気づいたことを書きたいと思います。
ちなみにここで言うコンサーティーナとは、アングロ・コンサーティーナ、デュエット・コンサーティーナも含むものです。
値段によるグレードが顕著
コンサーティーナは値段による品質の差がかなり激しい楽器です。音色のよい・悪いといったレベルの以前に、ボタンを押すのに必要な力など、物理的なレベルでかなりの差があります。
コンサーティーナは内部の部品点数の多い、非常にメカニカル(機械的)な楽器です。そのためコストカットは品質の低下に直結してしまうのです。
為替相場などによっても多少違ってきますが(この記事を書いている2021年3月現在では1ドルは106円です)、現代のコンサーティーナのグレードを大まかに分けると、以下の4つに分けられると思います。
- 10万円前後かそれ以下の初心者向け楽器
- 20万円前後の中級者向け楽器
- 30万円前後の上級者向け楽器
- 40万円前後かそれ以上のさらに上級者向けの楽器
では、それぞれのモデルについて見ていってみましょう。
初心者向け楽器
Bastari/Stagiの楽器、Concertina ConnectionのRochelleモデル、McNeelaのWrenモデルなどが該当する楽器です。
これらの楽器はまず入手が容易です。日本国内では東京の谷口楽器さんが長くBastariの楽器を取り扱っていますし、京都と東京に店舗を持つ「ケルトの笛屋さん」でも取り扱いを行なっているでしょう。
楽器自体を習うのが初めてだったり、コンサーティーナという楽器に興味はあるが継続できるかどうか分からない、といった方には、まず初心者向けの楽器がおすすめできます。
中級者向けの楽器
Concertina ConnectionのMinstrelモデル、McNeelaのPhoenixモデルなどが該当する楽器です。
実はこの価格帯のコンサーティーナについて、筆者はそれほど多くのコンサーティーナを触ったことがあるわけではありません。しかしネット上の情報などをチェックしていると、このグレードのコンサーティーナは近年になってラインナップが充実してきている傾向があるようです。
既に他の楽器を経験したことがある人などは、楽器としての品質がある程度確保されている中級者向けの楽器から始めたほうがいいかもしれません。
上級者向けの楽器
Concertina ConnectionのCloverモデル、MorseのCéilíモデルなどが該当する楽器です。
コンサーティーナを本格的にやってみたいという方は、お財布が許せばぜひこの価格帯のものをおすすめします。この辺りのモデルになってくると、音が目立つので合奏を行なっても自分の音が埋もれにくい、演奏感が軽いので長く弾いていても疲れにくいなど、機能的なレベルが上がってきます。
初心者向けの楽器を使用していて物足りなさを感じた場合、おそらく中級者向けの楽器を飛ばしてこちらの価格帯の楽器を検討したほうがよいでしょう。きっと一生モノの楽器として使えるはずです。
さらに上級者向けの楽器
さらに上級者向けの方法としては、アンティークの楽器を購入するという手段と現代の高級機メーカーの楽器を購入するという方法があります。
先述の上級者向けの楽器までのグレードでは、実は内部のリードに「アコーディオンリード」が使用されていることが多いのですが、本項のさらに上級者向けの楽器では、伝統的な「コンサーティーナリード」が使われている楽器が多くなります。コンサーティーナリードは独特の甘い音がするリードで、本格的なコンサーティーナ奏者はコンサーティーナリードの楽器を使用する傾向が強いです。
アンティークの楽器として広く流通しているのはWheatstone、Lachenalなどの楽器です。Jeffries、Crabb、Jonesといったメーカー名にも出会うことがあるでしょう。現代の高級機メーカーとしてはCarroll、Dipper、Edgley、Suttner、Wakkerなどが存在します。
これらの楽器の購入に関しては、可能な限りコンサーティーナに詳しい知り合いにコンタクトを取って検討を進めることをおすすめします。おそらくこのクラスの楽器に手を出す頃には、アイルランド音楽界など何らかのコミュニティに参加していることでしょう。
楽器に精通していて、しかも親切な方というのが実は日本各地に存在しています。私もそういった方々に助けられてきました。知り合いのツテを探っていってみましょう。
おわりに
楽器の購入に関して語り出すとキリがないので、ひとまず価格帯という視点を持ってこの記事を書いてみました。
楽器は多少お金のかかるものですが、そこから得られる経験はプライスレスです。あなたがよい楽器に巡り合うことができるよう願っています。