うつ病とは何か – 原因と症状、接し方

うつ病は誰でもかかりうる病気ですが、その原因を分かりやすく、簡単に説明することは容易ではありません。今回はそんなうつ病について解説してみたいと思います。

うつ病とはどんな病気か

うつ病の主な症状にはさまざまなものがあります。気分の落ち込み、疲れやすさ、意欲や興味が湧かなくなること、不安や焦燥感、眠れなくなること、といった症状です。これらの状態は確かに、健康な人でも起こることはあります。ショックな出来事があれば落ち込むでしょうし、ときには眠れないこともあるでしょう。

うつ病を特徴付けるのは、これらの症状が持続的であるということです。具体的にはこのような症状が2週間以上続く場合、と言われることがあります。また、その症状の程度が日常生活に支障をきたすという点も特徴です。健康な人は落ち込むことがあっても、それが何週間にも渡って続くことはないでしょうし、仕事にまったく手がつかなくなるということもないでしょう。持続的で日常生活に支障をきたすという点、この2点がポイントです。

最初に挙げた症状を簡単にまとめると、うつ病の症状はエネルギーの欠乏と、それにも関わらず休息ができないことの2つに分けられると思います。うつ病の当事者は、何もする気が起きない、することができないといった活動能力の低下とともに、かといって安心して休むこともできないという非常に苦しい立場に置かれるのです。

その原因は

うつ病の原因は長期間に渡る強いストレスであることが多いですが、これはそれほど単純な話ではありません。うつ病の発症には、本人の気質、周囲の環境など、さまざまな要因が絡んでいます。表面上は同じ出来事に遭遇したように見える人も、ある人はうつ病を発症するかもしれないし、ある人はうつ病を発症しないかもしれません。単一の原因が指摘できることはむしろまれだと考えたほうがよいでしょう。

「○○が原因でうつ病になったのだ」という原因探しは、あまり現実的ではありませんし、あまり治療的でもありません。うつ病の原因に「何らかのストレス」が関わっているということは、おそらく間違いではありませんが、ストレスという外部からの刺激を単純に説明することは難しいですし、ストレスを受ける本人の気質や環境といったものも簡単に説明するのは難しいものです。

もしあなたがうつ病について調べたことがあれば、「脳内の神経伝達物質のバランスの乱れ」といった説明を読んだことがあるかもしれませんが、これもあまり腑に落ちる説明ではなかったでしょう。これはちょうど、食あたりのことを「胃や腸内環境のバランスの乱れ」と説明するようなものだからです。これでは肝心の「何を食べたから食あたりになったのか」という点についての説明になっていません。しかし、うつ病についての現代の科学的な説明は、これと同じように明快な原因について語ることができないのです。

本人への接し方は

周囲にうつ病になった人が現れた人は、おそらくどのようにして接したらいいのか戸惑うことでしょう。しかし、考えてみてください。それがどのような病気の人であれ、「○○の人への接し方」という単純明快な指針を示すことは可能でしょうか。おそらくそれは難しいと思います。ここでも、単純明快な答えはありません

しかし、いくつかのヒントを示すことはできます。まず、うつ病の人は非常に自責的になっているということを覚えておきましょう。多くの物事に対して、自分が悪い、自分のせいだ、と思い込むということです。

たとえばうつ病で仕事を仕事を休職してしまった人がいるとしましょう。この人は「たくさんの人に迷惑をかけてしまった、もう死ぬしかない」と考えるかもしれません。これは健康な人から見ると、明らかに思考の飛躍のように思えますが、うつ病の人は実際にそう考えうるのです。周囲の人は、「あなたは悪くない」というメッセージを伝える必要があるかもしれません。

次に、うつ病の人はあまりにも深刻なエネルギーの欠乏状態に陥っているという点です。これも健康な人には想像が難しいかもしれません。外出してコンビニに行くといったことはもちろん、場合によっては机の上のゴミをゴミ箱へ入れることすら難しいのです。うつ病の人が何かを「できない」という状態になったら、それは「本当にできない」ということです。やろうと頑張ってもできないのです。こうした場合には、周囲の人がなるべくサポートに回る必要があるでしょう。

うつ病の人に「頑張れ」は禁句だ、という話を聞いたことがある人もいるでしょう。うつ病の人は多くの場合、自らの心身の限界を迎えるまで頑張ってしまった人であり、「もうこれ以上頑張れない」という心身の悲鳴がうつ病という病気の発症なのです。

さらにもう一つヒントを挙げるとすると、うつ病というものは回復に時間がかかります。逆に言えば、時間さえかければ回復しうるということでもあります。うつ病となった本人は、悲観的な思考と不安の症状によって、「もう治らないのではないか」などと考えがちです。回復への希望を持って見守る、というのは周囲の人たちの大切な仕事です。おそらく時間はかかりますが、うつ病は回復します。周囲の人たちも、過度な不安に飲み込まれないようにしましょう。

おわりに

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。私は他にもうつ病関係の記事を数多く書いているので、ご参考にしていただければと思います。

もしあなたがうつ病になってしまったご本人なら、今はどうか回復を信じてゆっくり休んでください。もしあなたがうつ病になってしまった人のご家族や職場の関係者などでしたら、やはり回復を信じてください。

最後に、ご本人の周囲の方へ。周囲の方がこのようにうつ病について勉強してくれるということは、本人にとって非常に大きな力になります。どうかうつ病に関する理解を深めていただければ幸いです。