うつ病と転職、退職

うつ病にかかってしまった場合、転職や退職といった選択肢が頭をかすめるかもしれません。今回はうつ病と転職、退職について考えてみたいと思います。

セオリーは「先延ばし」

あなたは現在、うつ病の症状がある状態でしょうか。夜眠りにくかったり、不安や焦燥感といった症状が出ている状態でしょうか。

もしあなたが休職中で、まだうつ病の症状がある程度出ている状態でしたら、セオリーは「先延ばし」です。あなたはまだ、うつ病という病気の症状に圧倒されてしまって、冷静な判断ができない可能性があります。症状が良くなるまで、さしあたり転職や退職といったことについて考えるのはやめておきましょう。

うつ病の症状が良くなるには、一般的に3ヶ月〜6ヶ月程度かかると言われていますが、それ以上かかる場合もあります。私はうつ病関係の記事で繰り返し述べていますが、うつ病の治療は長期戦です。まずは転職や退職といったキャリア関係のことは置いておいて、体調を元に戻すことを第一に考えてください。

「会社に迷惑をかけてしまった」などという理由で退職を考えてしまう場合も、いったん保留にしてください。うつ病はあなたにとっては大ごとですが、会社組織といったものにとっては「よくある出来事」です。自分を責めないでください

それでは体調が良くなってきたとき、元の会社に復職するべきでしょうか。それとも転職を行うべきでしょうか。

セオリーは「元の職場へ」

ここでもおすすめされるのは転職ではありません。元の職場に戻るのがセオリーです。

転職といった環境の大きな変化は、心身に思わぬ負担をかけるものです。そしてうつ病から回復した人というのは、一時的に社会的な免疫とも言うべきものが大きく落ちている状態になります。健康な状態ならば耐えられていたストレスにも、今は耐えられなくなっている可能性があるのです。この状態で転職という環境の変化を引き起こすのは、非常にリスキーです。

うつ病を発症した理由として、仕事上のストレスが原因だったでしょうか。もしその場合、今の会社に在籍していることはそのままにした上で、無理なストレスを減らすよう、会社との業務調整に当たるようにしましょう。仕事の調整というものが「言うほど簡単ではないこと」を私は知っています。ですが、それでもやる必要があります。

転職や退職を考えるべきなのは、会社がいわゆるブラック体質で、業務調整に応じてもらえない場合です。常識的な会社であれば「人には無理なことがある」「人は無理なことを無理と言う権利がある」ということを分かっているものです。業務調整の要望というものは、職場の都合もあるので何でも通るわけではありませんが、会社側にあなたの意思と健康を尊重する姿勢があるかどうかはよく見極めたほうがよいでしょう。

再発を繰り返してしまう場合は

先に述べたように、うつ病で転職や退職を考えるべきなのは、会社側に明らかな問題があった場合です。しかし、もう一つ考えるべきケースがあります。あなたがうつ病を何度も再発させてしまった場合です。

これは判断が難しいことですが、再発を繰り返してしまう場合、職場や職種というものが根本的な部分であなたに合っていない可能性があります。こういったケースでは、転職や退職を視野に入れるべきかもしれません。

繰り返しますが、ここでも体調を戻すことが第一です。体調を戻して、冷静な頭で物事を考えられるようになったら、キャリアの転換について考えましょう。これもまた大変に難しい話です。病気という現実を前にして、「どうして自分がこんな目に遭わなければいけないんだ」と思うかもしれません。それでも、あなたはどうにかして生活していく必要があります。

おわりに

うつ病というのは人生における大事件であって、遭わずに済むのならそれが一番よいでしょう。しかし、遭ってしまったからには仕方がありません。

世の中にはうつ病というマイナスの事件をきっかけに、生き方や働き方を見直すことができた、というプラスの変化を引き出すことになった人も数多く存在しています。あなたがうつ病という病気を乗り越えて、よりよい生き方に到達できることを願っています。