楽器を上達するコツ – 上手くなるための練習のヒント

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この記事は2021年に書かれたものです。その後、楽器を楽しんで続ける&効率よく上手くなるためのノウハウを体系的にまとめた書籍「社会人のための楽器の継続と上達の手引き:練習の習慣化から、音楽性を深めるまで」(Kindle版note版)を2024年2月に出版しました。この記事よりもずっと深い内容が書かれているので、ぜひチェックしてみてくださいね。note版では最初の2つの章が試し読みできるほか、おまけ記事の「制作ノート」もあります。

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楽器を弾くからには、上手に弾きたいですよね。私は以前、楽器を続けるコツについて記事を書いたことがありますが、今回は上達のコツについて書いてみたいと思います。

練習してる?

みなさん、練習してますか? 練習しましょう。これ以外の項目はささいな事柄に過ぎません。練習はすべての上達手段の土台となるものです。その他の上達ノウハウは、練習の効果を少しだけ掛け算で高めてくれるものとしてとらえたほうがいいでしょう。そうです、掛け算です。ベースとなる数字はあくまで練習量です。

毎日練習ができれば、それは理想的なことです。電子ピアノなどが使用できれば、仕事が終わったあとでもヘッドホンを使用して夜に練習ができるので理想ですね。アコースティックな楽器の場合はどうでしょうか。私はコンサーティーナという蛇腹楽器を演奏していますが、楽器を始めてから数年の間は、毎日会社にこっそり楽器を持ち込んで、帰り道に夜の公園に寄って毎日の練習時間を確保していました。

この辺りは住宅事情や仕事の事情にも左右されるので、難しいところではあります。しかし、定期的に練習する習慣を持つことは大切なことです。可能であれば、休日は必ず公園に行って1時間以上練習するなど、練習を生活のルーチンの一部にすることがいいでしょう。

とはいえ、練習の質も大切です。仕事であまりに疲れ切ってしまっている日などは、たまにはお休みしてもいいでしょう。ただ、「少しやる気が出ないな」程度の場合はあえて練習に手をつけてみることをおすすめします。楽器を続けるコツの記事でも触れたとおり、人間というのは「やっているうちにやる気が出てくる」ものだからです。

好きな音楽を分析的に聴く

あなたの好きな音楽をとにかくたくさん聴きましょう。ロック、ジャズ、クラシック、テクノ、何でも構いません。ときには鳴っているあらゆる音を分析的に聴いてみましょう。ベースやドラムの一つ一つの細かい音まで聴いてみるのです。もちろんあらゆる音に同時に集中するということはできませんから、あるときはベースだけに集中して聴いてみる、あるときはドラムだけに集中して聴いてみる、といった方法を取ります。

YouTube等で動画を見てみるのもよい方法です。たとえばギターの演奏動画を見るとき、フレットを押さえる左手が思った以上に細かく動いていることに気づくかもしれません。単純な音符の並びをベタっと演奏しているのではなく、ビブラートやスライドの音を細かく入れているのです。あるいはドラムの演奏動画を見るとき、ほとんど聴こえるか聴こえないか分からない程度にスネアドラムを細かく叩いていることに気づくかもしれません。これはゴーストノートと呼ばれ、グルーヴのあるドラムの演奏に隠し味として使われるものです。

一度こうした楽器ごとの細かい表現に気づいてしまうと、次回からは以前には聴こえなかったニュアンスが聴こえるようになります。耳の解像度、分解能とも呼べるものが向上するのです。いろいろなジャンルで、いろいろな楽器の音を分析的に聴いてみましょう。

コピーする

好きなアーティストの演奏をコピーするのも上達にはよい方法です。楽譜やバンドスコアなどがあればよいですが、そうでない場合は、おそらく苦労して楽譜を起こすことから始める必要があるでしょう。これも上達には非常に役に立つ方法です。

聴いた音をそのままドレミに起こすということ、これは一般に考えられているよりはるかに難しいことです。楽譜を持っている人も、この「イチから楽譜を起こす」という作業をぜひ経験してみることをおすすめします。これは先に触れた「耳の解像度」を上げることに役に立ちます。

実際にコピーを行ってみると、おそらく好きなアーティストの凄さが実感できるでしょう。そして何か自分に足りない部分が明らかになってきます。演奏が完全にコピー元と一致することはありません。部分的には、それは絶えず上達しましょうということでもありますが、別の意味では、あなたの個性が出ている面でもあります。8割コピーして2割の個性を目指す、といった目標もありだと思います。

コピーを行うときは、最初はテンポを落としてしっかりニュアンスを掴むことを心がけましょう。荒い演奏でスピードだけ求めるのはあまりよろしくありません。ゆっくりきちんと弾けるようになれれば、おそらく知らないうちに速く弾くこともできるようになっています。

自分の演奏を聴き返す

自分の演奏を録音して聴き返してみましょう。演奏中には気づかなかったリズムのブレや音量のばらつきなどに気づくことができます。最初は恥ずかしくて聴けたもんじゃないかもしれません。そういうものです。これも上手くなるためには必要なステップです。

録音は記録を残すという意味でも実は価値のあることです。1年前、2年前の演奏と現在の演奏を聴き比べることができます。すると、きっと何か成長している部分が見つかるはずです。こうした成長の実感は、練習のモチベーションを維持する上でも重要になってきます。

良い楽器を使う

もしあなたが本格的に楽器に取り組んでいるなら、予算の許す範囲でなるべく良い楽器を選んだほうが得策です。良い楽器は一般的に弾き方に対して敏感に反応を返してくる傾向があります。上手に弾けば良い音を返してくれますし、上手に弾けなければ良い音を返してくれないのです。この反応性の良さについては、楽器を上達する上ではおそらく必要になってくるものでしょう。

良い楽器は弾いていて気持ちがいいですから、モチベーションも上げるという意味でも有効です。もしあなたが初心者向けの楽器から始めて、しばらく楽器を続けることができている状態なら、中級者向けの楽器や上級者向けの楽器への乗り換えを検討することもよいかもしれません。

他の種類の楽器に手を出す

楽器というのは種類によって演奏者に強く求められる能力が異なっています。たとえば私の演奏しているコンサーティーナという楽器はアコーディオン系の楽器ですから、極端な話、ボタンを押せば正確な音が出ます。しかし、これがヴァイオリン(フィドル)やトランペット等でしたらどうでしょう。おそらく「正しいピッチ(音程)を作る」という能力が必要でしょう。アコーディオン系の楽器をやっている私にとって、「正しいピッチを作る」というのは未知の能力です。

逆にヴァイオリンをやっている人がピアノという楽器を見てみたらどうでしょう。ヴァイオリンでも重音を弾くこと(2つの音を同時に出すこと)はできますが、基本的にはヴァイオリンという楽器は1つの音の連なりで単旋律を弾く楽器です。ヴァイオリンを演奏する人にとって、ピアノのように両手を使って複数のメロディや和音を同時並行して弾いていくというのは、やはり未知の能力でしょう。

音楽というもの全体に理解を深め、バランスの良い演奏者になるためには、ときには他の楽器に手を出してみることも重要かもしれません。そこにはきっとあなたにとって未知の領域があり、メインの楽器を上達するヒントになるであろう刺激が待っていると思います。

おわりに

楽器を上達するコツについて語ってみました。筆者はこの記事を書いている時点で5年半ほど楽器を続けていますが、上達の余地はまだまだ無限にあるなあと感じています。

この記事があなたの楽器の上達にとって、何らかのヒントとなってくれたら幸いです。