購入前にチェック! Morse の Céilí コンサーティーナの評判は?

アメリカのアコーディオン/コンサーティーナ販売店、THE BUTTON BOX で購入できる R. Morse & Co. の Céilí コンサーティーナ。今回は Céilí の購入を考えている人に向けて、レビュー記事をお届けしたいと思います。

本記事の流れとしましては、基本的なスペック、長所、短所、仕様の選択についてのアドバイス、価格と納期という順番で書いています。それでは詳しく見ていっていましょう。

基本的なスペックは?

Céilí コンサーティーナの写真

Céilí コンサーティーナは、Morse が販売している30ボタンのアングロコンサーティーナです。ボタン配列は Jeffries 配列、Wheatstone/Lachenal 配列、その他のカスタム配列の3種類から選択できます。

楽器の調(キー)はC/G、G/D、D/Aの3種類から選択可能です。また仕上げのカラーはローズウッド、ブラックの2種類から選ぶことができます。

Céilí コンサーティーナはハイブリッドコンサーティーナと呼ばれるカテゴリに属しています。これは内部のメカニカルな仕組みを伝統的な作りにしつつ、リードには入手性の良いアコーディオンリードを使用するという楽器を指しています。

通常、ヴィンテージの楽器ではコンサーティーナリードと呼ばれる手作りのリードが使用されています。コンサーティーナリードの楽器は現代でも製造されていますが、ハンドメイドという特性上、楽器自体が高価になるという欠点を抱えています。

ハイブリッドコンサーティーナでは、このリードをアコーディオンと同じものに置き換えることで、楽器自体の値段を安く抑えることができています。

長所は?

まず、びっくりするくらい軽いです。この「軽さ」には2種類の意味が含まれています。楽器自体の重さが軽いという点と、蛇腹を押し引きするときの演奏感の軽さです。長時間演奏しても疲れないというのは、この楽器の大きな特徴の一つでしょう。

Céilí のボタンには Delrin という樹脂素材が使われています。この点は私は人から指摘されて気がついたのですが、樹脂のボタンは金属のボタンに比べて指に対する当たりが柔らかい傾向があるようです。Céilí のボタンは直径がそれなりに太く、角の取れた加工がしてあるので、この点も演奏の疲れにくさに関係していると思います。

ボタンの周りにはフェルト素材が当たる加工がしてあり(Bush と呼ばれる加工です)、カチャカチャしたボタンノイズがほとんどしないというのもこの楽器の特徴です。

短所はないの?

さて、良いところばかりを述べてきましたが、短所はあるのでしょうか。あるといえばあります。次の2点です。

まず、アコーディオンリードのハイブリッドコンサーティーナを選択するということは、コンサーティーナリードの独特の音色については諦めなくてはなりません。

価格の話はあとからで出てきますが、おそらくコンサーティーナリードで Céilí と同じ品質の楽器を手に入れようと思ったら、最低でも倍の値段は見ておく必要があります。Céilí は手頃な価格で高品質の楽器を購入できるというところが長所でもあるので、リードの種類だけを持ってして短所と呼んでしまっていいかどうかは微妙なところです。

もう一つの欠点は、メンテナンス性です。この点は過去の当ブログの記事「R. Morse & Co. の Céilí コンサーティーナの修理」でも触れましたが、Céilí は自分で分解してメンテナンスするのが比較的難しい部類に入ると思います。

具体的には、リードが取り付けられているプレートを取り外すのが少し難しいことと、リードがプレートに蜜蝋で接着されているという点です。万が一、リードにホコリが噛んでしまうなどの事態が起こった際、ハンダごてで蜜蝋を熱してリードを取り外すといった手順が必要になるかもしれません。この辺りは、不安であればご自身での修理ではなく、専門のアコーディオン店などに修理をお願いしたほうがよいと思います。

仕様の選択について

まず楽器の調としてC/G、G/D、D/Aの3種類が選べますが、何か明確な理由がない限り、C/Gを選択するのが一般的でしょう。アイルランドの伝統音楽で使用されるのは一般的にC/Gの楽器です。他のジャンルの音楽を演奏したい場合でも、幅広い調に対応しやすいのはおそらくC/Gの楽器です。

キー配列としては Jeffries 配列と Wheatstone/Lachenal 配列が存在していますが、新たにアングロコンサーティーナを始める人にとって、どちらを選択するかは悩ましい問題です。一般的にヴィンテージの楽器などで流通量が多いのは Wheatstone/Lachenal 配列のほうで、他の楽器への乗り換えやすさを考えると、そちらを選ぶことには一定のメリットがあります。

一方の Jeffries 配列は、かつて存在していたアングロコンサーティーナの最高峰のメーカーである Jeffries で採用されていた配列です。アイルランド伝統音楽で頻出する「中央のCの1オクターブ上のC♯」について、Wheatstone/Lachenal 配列では「押音」の1つしかないのに対して、Jeffries 配列では「押音」「引音」の2つが存在しており、この「引きのC♯」が非常に便利だという意見があります。

どちらの配列がいいという一般的な指針を出すことは難しいですが、Céilí モデルのデフォルトの配列は Jeffries 配列のほうで、私も Jeffries 配列のものを注文しました。

最後に、エンドのカラーがローズウッドとブラックの2種類から選択できますが、これはお好みのほうでよいでしょう。写真で見る限り、どちらも非常に美しいです。

価格と納期について

2021年3月現在で、価格は $2,825 となっています。日本国内への送料が $150 程度かかると思いますので、およそ $3,000 と考えておくとよいでしょう。この記事を書いている時点では1ドルは109円程度ですので、日本円で33万円弱になります。

納期については、新品のストックがあればすぐに発送してもらえるかもしれませんが、なければ製造に少し時間がかかる可能性もあります。私が購入した際にはストックがありましたが、私の友人が購入した際にはストックがなく、8週間程度かかるという回答をいただいたそうです。

アメリカからの発送になるので、発送から到着までは1週間〜2週間の間と見ておくとよいでしょう。

おわりに

R. Morse & Co. の Céilí コンサーティーナの購入について、一通り情報を述べてみました。お役に立てれば幸いです。

コンサーティーナの購入にあたっては、なるべく音楽関係の知人などをたどって、コンサーティーナに詳しい人の意見を仰ぐとよいでしょう。あなたの悩みについて、何か的確なアドバイスがもらえるかもしれません。

それでは、あなたにコンサーティーナとの良い出会いがありますように!