発達障害の当事者が抱える「生きづらさ」にどう対処するか

ASD(自閉症スペクトラム症)やADHD(注意欠陥・多動性障害)を持つ当事者たちが抱えるのが「生きづらい」という問題です。生きづらさにはどう対処したらよいのでしょうか。今回はその辺りについて考えてみたいと思います。

なお、ここで述べる対策は、当事者にとってはとても困難なことである可能性があります。しかし、私はそれを承知の上で書いています。発達障害当事者の人生はハードなものに設定されています。それは周知の事実です。それでも、われわれは何とかしてそれに取り組んでいく必要があります。

働ける場所を見つける

何より必要なのは、外の世界に居場所を見つけることです。これにはふたつの意味があります。まず働ける場所を見つけることと、次に仲間(友達)を見つけることです。

当事者が働ける場所を見つけることは、言うまでもなく困難です。私は以前、「発達障害と職業選択 – 就職、転職で失敗しないために」という記事を書いたことがあります。可能な限り長所を活かし、対人関係に代表される短所を要求されない仕事に就こうという趣旨でした。

普通の人は仕事に対してやりがいやより良い待遇などを求めるかもしれませんが、当事者にまず必要なのは、なんといっても健康を維持しながら働き続けられる職場です。無理して働けなくなって健康が破綻する、健康が破綻した結果として経済的に破綻する、という流れだけはなんとしてでも避けなければいけません。

「世の中で働けない」という事実は、「自分は役に立たない人間なのだ」という自尊心の低下に直結します。この点については過去の記事「発達障害の二次障害によるうつ病とその対処」でも触れました。

どうにかして自分に合った職種、業種、働き方を見つけてください。転職なども何度か経験する必要があるかもしれません。もしあなたが「うまく働けている、自分は人の役に立てている」ということを感じることができたなら、あなたの生きづらさはかなり和らぐ可能性があります。

仲間を見つける

みなさんには友達がいますか? 私は当事者ですので、「友達なんていない」と言われてもぜんぜん驚きません。

しかし、生きていく上で仲間の存在は不可欠です。われわれのようにコミュニケーションが苦手な人々にとっても、やはり他者の存在というのは欠かすことができないのです。

人生の中で最良のものは、他者との関係の中で生まれます。これは私は断言してもいいです。繰り返しますが、心理的に他者というものをあまり必要しないASD当事者などにとってもそれは同じなのです。仮に今のあなたはそうは感じないとしても、です。

どうにかして他者との関係を繋いでいきましょう。世の中には本当にさまざまな人がいます。馴染みを持てないこの世界の中でも、あなたの性質に近い人がきっとどこかに存在しています。ここでも仕事と同じように、失敗しながら学んでいく必要があるかもしれません。それでも、他者と関わることを諦めないようにしましょう。

また、私は過去に「大人になってからの友達の作り方」という記事も書いていますので、興味のある方はそちらも参照してみてください。

おわりに

発達障害を抱える当事者が生きづらさに対処していく方法について述べてみました。キーワードは自尊心です。仕事を通じて他人の役に立つことができること、友人関係などを通じて他人から大切にされること、このふたつが重要です。

この記事では、生きづらさという心理的な課題について、あえてあなたの内面的なことではなく、外部の世界との関わり方に注目したアプローチを述べてみました。

この点は過去の記事「自尊心を高めるには – 自分を好きになる方法」でも強調したのですが、健全な自尊心というのは内面に目を向けるのではなく、外部の世界に目を向けることで初めて育っていきます。あなたの人生がどんなに苦しいものであったとしても、その苦しみになるべく囚われないでください。己の不幸を嘆くことをやめて、外の世界に目を向けるのです。

あなたがこの世界との関わりを通して、生きづらさというものを少しでも解消していけることを願っています。