発達障害のグレーゾーン問題 – 非定型発達の人々を考える

ASD(自閉症スペクトラム症)やADHD(注意欠陥・多動性障害)に代表される発達障害ですが、この発達障害にはグレーゾーンと呼ばれる人たちが存在します。今回はこのグレーゾーン問題を考えてみたいと思います。

グレーゾーンとは何か

発達障害のグレーゾーン当事者とは、医学的には発達障害という診断がついていないものの、発達障害の傾向をある程度持っている人たちを指します。発達障害の対義語は定型発達です。グレーゾーンの当事者たちは、非定型発達の要素をある程度持っている人たちと言えます。

私は以前、「うつ病とは何か – 原因と症状、接し方」という記事を書いたことがあります。この記事では、うつ病と普通の人のゆううつを区別する観点として、日常生活への支障という線引きを挙げました。

たとえば普通の人でも、イヤなことがあればゆううつになったりはします。しかし、それで仕事にまったく手がつかなくなったり、毎晩眠れなくなるといった事態になることは考えづらいことです。しかしうつ病という病気になると、そういった「日常生活への支障」が現れるのです。

発達障害というものを考える上でも、この線引きは有効であると言えます。個性的な人と、発達障害の当事者を分けるのは、その個性が日常生活への支障として存在しているかという点です。「ちょっとアバウトな人」「うっかり者」は個性と呼べますが、仕事に頻繁に支障をきたすほどケアレスミスが多い人は、ADHDの特性を持っている可能性があります。

それを踏まえた上で、発達障害のグレーゾーンというものを考えると、グレーゾーンの人たちというのは日常生活への支障が「障害」と呼べるかどうか微妙なラインにいる人たちだと言えます。

たとえば、コミュニケーションが苦手で職場に馴染むことができず、転職を繰り返してしまう人の場合はどうでしょうか。これは特定の個性を持つ人が社会に適応していく上で必要な人生経験と呼べるかもしれませんが、ASDを抱える人が必要な支援を受けられずに苦労している状態と捉えることもできるのです。

グレーゾーン当事者の苦しみ

では、グレーゾーン当事者の苦しみはどこにあるのでしょうか。おそらくそれは、就労という現実的な問題と、漠然とした生きづらさという2点にあると思われます。

コミュニケーションが苦手であること、作業上のミスが多いことなどは、仕事上で確かにマイナスと評価される点です。しかし、グレーゾーン当事者たちは、努力が足りないからでもなく、注意が足りないからでもなく、元々の性質としてそのような困難を抱えているのです。

仕事がうまくこなせない、人間関係がうまくいかないといった事実は、その人の自尊心の低下に直結します。これは先に挙げた生きづらさを言い換えた言葉であると言えます。

グレーゾーン当事者は、なぜだかうまくいかない、周りに馴染めないといった苦労を抱えながらも、それが障害であるという医学的な「お墨付き」をもらうこともできず、自分はダメな人間なのだという思いに苦しめられるのです。

グレーゾーンへの対策

グレーゾーン当事者の場合、障害者手帳などといった福祉サービスが受けられない可能性があります。私は発達障害の当事者の人生はサバイバルそのものだと考えていますが、グレーゾーン当事者の人生もそれに近いものになるかもしれません。

幸いにも現代では、インターネットや書籍などを通して、ある程度発達障害に関する情報が流通するようになりました。グレーゾーン当事者も、これを利用して自らの困難に対処していく必要があるでしょう。

私は以前「発達障害と職業選択 – 就職、転職で失敗しないために」という記事を書いたことがありますので、よろしければそちらも参照してみてください。またこのブログの「発達障害」タグの他の記事も参考になると思います。

発達障害の当事者の持つ困難は多種多様です。グレーゾーン当事者の持つ困難も同様と言えるでしょう。グレーゾーン当事者の生き方について、単純明快な解決の指針を示すことはできません。おそらく本人が失敗しながら学んでいくしかない部分も数多くあるでしょう。

おわりに

発達障害のグレーゾーン当事者の定義、その苦しみと対策について簡単に述べてみました。おそらくこの記事の情報だけでは、グレーゾーン当事者の抱える苦労への対策としてはまったく不十分でしょう。発達障害に関する書籍やインターネット上の情報などを当たって、あなたが生きていくのに必要な情報を手に入れていってください。

あなたの生きづらさが少しでも軽減することを祈っています。