Jim O’Rourke – Bad Timing (1997)

鬼才ジム・オルーク Jim O’Rourke による1997年の名盤。ジムの作品にはロックやドローンやインプロなどさまざまな側面がありますけれど、私は本作が彼の最高傑作なんじゃないかなと思っています。

基本的にはギターによるインストの作品です。各10分前後の4トラック入りで計44分となっていますが、アルバム一枚で「Bad Timing」という一つの曲と捉えるほうがおそらく自然でしょう。

1パート目の「There’s Hell In Hello, But More In Goodbye」はアルバムの導入部。ギタープレイはジョン・フェイヒ John Fahey からの影響がうかがえますね。途中から静かにピアノも入り始めて、非常に美しいです。シンセとオルガンの音色も聴こえてきます。

2パート目の「94 The Long Way」ではアコギの音色にクリーントーンのエレキギターも重ねられ、さらにはトランペットとトロンボーンでしょうか、金管楽器の音色も現れ始めます。サウンドは落ち着いていながらも元気さを感じさせます。

3パート目の「Bad Timing」は少し憂いを帯びたトーンで始まります。ギターのミニマルなフレーズの繰り返しの上に、何かを誘うようなシンセサイザーの幻想的なフレーズが重なります。後半にはうっすらと輪郭の曖昧なサウンドコラージュのような音も入ってきます。

4パート目の「Happy Trails」は電子的なノイズとアコギの音色が混ざり合って始まります。3分ほどしてパタリと止むノイズ。再び始まる静かなソロギターの演奏。そしてラスト3分になったところで、突如として始まる金管楽器隊とドラムスによる陽気なパート。およそ2分間にわたる華やかな演奏のあと、再びギターによる静かな演奏に戻ってこのアルバムは幕を閉じます。

この視界がパッと開けたような感覚。この2分間のためだけに40分近い楽曲を構築したのか、と思わせてしまうほどのインパクトがあります。

本作はジム・オルークの傑作であり、ギターインストの名盤でもあると思います。ぜひ一聴をおすすめします。