入門編: Talking Heads の名盤を探る

1974年に結成されたアメリカのロックバンド、トーキング・ヘッズ Talking Heads。

メンバーはデヴィッド・バーン David Byrne (Vo, Gt)、ティナ・ウェイマス Tina Weymouth (Ba)、ジェリー・ハリスン Jerry Harrison (Gt, Key)、クリス・フランツ Chris Frantz (Dr)の4人です。

4人は美術大学の出身で、デヴィッド・バーンの特異なキャラクターを活かした芸術的なライヴパフォーマンスなどで知られています。そんな彼らの名盤を3枚、セレクトしてみました。

Fear of Music (1979)

1979年の3rdアルバムで、プロデューサーはブライアン・イーノ Brian Eno です。

1曲目「I Zimbra」はアフリカン・ファンクを取り入れた名曲ですが、このアルバムでは次作で見せるような大々的なファンク方面への転換は行われておらず、アルバム全体としてはトーキング・ヘッズが元々持っていた素直なバンドサウンドが(それでも相当にひねくれていますが)上手く活かされています。

4曲目「Cities」はフェードインとサイレンの音から始まる曲で、デヴィッド・バーンのヴォーカルとリズム隊の面白さが存分に発揮された曲です。ティナ・ウェイマスのベースはちょっとヘンな感じで味がありますね。ドラムのノリもフィルインなどを聴くとかなり面白いです。

5曲目「Life Durning Wartime」はブラス・セクションとアフリカン・パーカッションの入った曲。よく聴くとキーボードがいい味を出してます。8曲目「Heaven」も非常に美しいヴォーカル曲です。

トーキング・ヘッズの1枚目には案外このアルバムがいいのではないでしょうか。名盤です。

Remain In Light (1980)

前作で取り入れたアフリカン・ファンクの音楽性をさらに発展させた、1980年の4thです。プロデューサーは引き続きブライアン・イーノ。80年代のロックシーンを代表する名盤としても知られています。

ミニマルに反復するビート、コード進行が丸々存在しないワンコードの手法。相当とんがったサウンドです。1曲目「Born Under Punches (The Heat Goes On)」からファンク色が強く前面に出ています。

3曲目「The Great Curve」は反復するパーカッションに折り重ねられたヴォーカルセクションが極めて複雑な表情を見せる曲。4曲目「Once In a Lifetime」はシンセサイザーの音色が印象的な彼らの代表曲で、2つの曲をあえてチグハグにくっつけたような、ヴァースとコーラスの対比が面白い曲です。

トーキング・ヘッズを語る上で避けて通れない、ハズレのない名盤だと思います。

Stop Making Sense (1984)

彼らのライヴパフォーマンスをジョナサン・デミが映画化した作品、「Stop Making Sense」のサウンドトラック盤です。発売当初は9曲入りに編集されていましたが、現在流通している15周年のリイシュー盤では全16曲が収録されています。

これはぜひともDVDで楽しんでいただきたい作品ですね。YouTubeで映像がチェックできるようが、版権的にダメなやつかもしれないので正規のDVDをご購入をおすすめします。映画は何もないステージにカセットテープ・プレーヤーとギターを抱えたデヴィッド・バーンが現れるシーンから始まります。

テープのリズムとギターの弾き語りによる1曲目「Psycho Killer」から始まり、曲が進むにつれてステージにメンバーが一人また一人と加わり、ステージ上にはドラムセットやパーカッションのセットが追加されていき(当然設営スタッフの姿も映像に映り込んでいます)、最終的にはゲストミュージシャンを加えた9人編成のバンドとなります。

序盤の「Thank You for Sending Me an Angel」、「Found a Job」などはシンプルなバンドサウンドが聴けて非常にいいのですが、後半の大編成になったバンドのサウンドもものすごいです。「Burning Down The House」でのシンセサイザーとパーカッションの入ったサウンドの素晴らしさといったらどうでしょう。

バーンの驚愕のダンスパフォーマンスが笑える「Life During Wartime」などはぜひとも映像で見てほしいですが、音源だけ聴くとこれが踊ったり走り回ったりしながら歌っているものだとはとても思えないクオリティですね。バーンのヴォーカリストとしての技量は相当なものだと思います。

後半の「This Must Be the Place (Naive Melody)」なども感動的な曲です。全16曲で音源だと1時間16分ありますが、最初から最後まで飽きの来ない、芸術としてもエンターテインメントとしても一級品のパフォーマンスだと思います。

本作はライヴ盤ではありますが、クオリティが異常に高いので、トーキング・ヘッズの入門盤として最初の1枚目に聴いてもらっても全然構わないと思います。名盤です。

おわりに

トーキング・ヘッズの名盤を3枚紹介してみました。本文中にも書きましたが、映画「Stop Making Sense」は本当に名作なので、ぜひ映像でチェックしていただきたいですね。彼らのパフォーマンスに度肝を抜かれること請け合いです。

ここで紹介したアルバムが気に入ったら1stの「Talking Heads: 77」(1977)、2ndの「More Songs About Buildings and Food」(1978)にも手を伸ばしてみるとよいでしょう。

では、トーキング・ヘッズの素晴らしい世界をお楽しみください!