システムトレードで利益を出す上で、最も重要なただひとつのこと

実際、シストレって儲かるんですか?

成功しないことが正しい場合がある (2023.12.14)」の記事で、エンジニアである私が自前のシステムを組んで、本気で株式のトレードを行った話をしました。余談としてシステムトレードの現実についても書こうと思ったのですが、まとまった話になるので、この記事として独立させます。

トレード用のシステムは一般向けに市販されたりしているので、今回は「実際、システムトレードって儲かるんですか?」という話をします。

株式投資であれFXであれ、投資の手法としてよく言われることには、実はほとんど根拠がありません。これで数百万円といったお金をリスクにさらすというのは、まともな感覚ではまずやらないことだと思います。しかし、お金が絡んだときの人間の欲というのは怖いもので、根拠のない願望に基づいて大金を失ってしまう人はいつの時代でもたくさんいます。

システムトレードの優位性は「客観的な売買ルールと統計的な根拠に基づいて利益を出す」という点にあります。ある売買ルールによって過去20年といった期間についてバックテストを行い、何千回の取引といったデータを得て、利益が出る傾向があるということを確認する。根拠のない感情に基づいた判断は、一切介在させない。これは一見すると間違っていないように思えますね。

さて、システムトレードのためのツールが市販されているという事実について、ひとつの真っ当な疑問が存在します。自分自身の資金をリスクにさらすという行為が必要だとはいえ、「お金を儲けるための方法が売られている」などということが現実にあり得るのでしょうか?

フォワードテストがすべてだ

投資について専門的な話をするとキリがないので、結論だけ言います。必ずフォワードテストを行ってください。行わないと死にます。つまり、2023年末日までの株式市場のデータによってバックテストが行われた売買ルールを使用するのなら、2024年1月以降の現実の市場で本当に利益が出るのか、一定の期間を確保して必ず確認を行なってください。

トレード用のシステムを販売している業者について、私が感心した点があります。これは批判や皮肉ではなく、良心的な業者であると感じたので実名を挙げると、国内株式のシステムトレードの売買ルールを販売している「トレジスタ」というサイトが存在します。ここではWindows向けのシステムトレードの有料ソフト「イザナミ」で使用できるルールが扱われています。

「トレジスタ」のサイト上では、売買ルールの残した成績が折れ線グラフで確認できます。ルール公開前の成績と公開後の成績は色分けして表示されており、つまりバックテストの結果とフォワードテストの結果が両方とも確認できるようになっています。これはすごく良心的なことです。もし、利益が出ないようなルールが販売されていたとしても、それが客観的に明らかにされているということですから。

さて、情報が公開されている以上、それを選んで利益を出したとしても損失を出したとしても、それはあなたの責任です。仮に年利が何十%という数字なら、ほんの1ヶ月でも早く実際の運用を開始したほうがいいと思いますよね? ちょっと待ってください。フォワードテストは確認しましたか? 確認しないと死にます

すごく強そうな最新の売買ルールは置いておいて、たとえば6ヶ月前に公開された売買ルールを確認してみてください。本当に利益は出ていますか? おそらく、こうした確認を行う人はほとんどいません。トレードの結果は長期で考えないと意味がないとはいえ、6ヶ月間というのはそれなりに意味のある期間です。バックテストから期待されるような利益は出ているでしょうか?

驚くべきことに、ほとんどの売買ルールではまったく利益が出ていないと思います。バックテストでの数千回ものトレードではきちんと利益が出ており、十分に統計的な根拠があると思われるのに、実際の市場で利益が出ないというのは直感に反するように思えます。カーブフィッティングなどは多少あるとしても、利益が出るということ自体は間違いないように考えるのが普通でしょう。コインを500回投げて、表が出た回数が400回ならば、それは何らかの理由で表が出やすいコインなのだと結論づけるのが普通なはずです。しかし、システムトレードにおいてはそうはならないんです。

嘘みたいですよね。でも、本当にそうなっています。トレジスタさんは良心的な業者なので、その事実を誰でも確認できる形で公開しています。ただ、それを誰も確認していないというだけの話なんですね。

トレードなんかに手を出すな

私自身は、アクティブ投資で利益を出せるという可能性を否定してはいません。システムトレードの基本理念も真っ当だと思います。ただ、それで成功するというのは何かビジネスを立ち上げて成功させることと同じなので、あなたがプロ野球選手やミュージシャンとして成功できる確率と同程度に考えたほうがいいです。

本当に夢のない話になりますが、お金が欲しいのならば真面目に働いて、節約生活をして、コツコツとインデックス投資を行ったほうがいいです。このブログでは過去に「投資」カテゴリでインデックス投資のことをいろいろと書いていますので、興味があれば読んでいただけたらと思います。

国際的に分散された株式市場への長期的な投資では、過去の研究により、年利にして7%程度の利益が得られるというデータが出ています。100万円に対して年間で7万円くらいですから、普通の金銭感覚からしたら、これは十分に魅力的な数字だと言えるでしょう。ただ、システムトレードの夢の世界では、年利が80%だとかいう数字が当たり前のように出てくるので、年利1桁というのはいかにも貧弱に思えますね。

この記事がシステムトレードで儲けようとしている人の目に入ったら……どうでしょうね、やっぱり右から左へなんでしょうかね。まあ、それもしょうがないです。

誰かが本当のことを書いておいたほうがいいと思ったので、私が知っていることを書きました。ネットの片隅にこういう記事が存在していることにも意味があると思います。誰かひとりでも、実際に道を踏み外して大切な時間とお金を失う前に、この記事が役に立ったらいいなと思います。