入門編: Frank Zappa の名盤を探る

音楽史にその偉大な名前を刻んだ天才、フランク・ザッパ Frank Zappa。音楽の世界では天才は多作だと言うことがありますが、彼の場合はとにかく作品がめちゃくちゃ多いです。

ザッパが52歳でその生涯を閉じるまで、生前に残した作品のディスコグラフィを数えてみたら62作品ありました。デビュー作が1966年、没年が1993年ですから、およそ27年間でリリースされた作品数が62です。半年に1回リリースしても足りない計算ですから、そのめちゃくちゃな製作ペースがわかると思います。(ちなみにザッパが遺したレコーディングの数は膨大で、彼自身の没後にもえげつない量のリリースが続いていますが、それについてはこの記事では触れないでおきます。)

さて、この記事ではそんなザッパの作品について、何から聴いたらいいの? という疑問に答えたいと思います。ここではマニアな視点は置いておいて、何よりもとっつきやすさを優先したいと思います。一般のロックファン、音楽ファンにザッパの魅力を感じ取ってもらえる名盤は何か。それがこの記事のテーマです。

では、さっそく作品の紹介に行ってみましょー。今回は全部で4枚紹介します。便宜上、年代順に記載しますが、この順番に聴く必要は全然ありません。

Hot Rats (1969)

ジャズロックの大名盤! ヴォーカル曲は1曲のみ、インスト中心のアルバムですが、これは聴きやすいです。キャッチーなメロディでザッパの代表曲とも言える「Peaches en Regalia」、キャプテン・ビーフハート Captain Beefheart がヴォーカルを取る「Willie The Pimp」、そしてサックスとヴァイオリンのうなる17分近い大作「The Gumbo Variations」。名曲揃いです。インストが好きな人、ジャズロックに馴染みのある人はまずこの作品から聴いてみるのがよいのではないでしょうか。

気をつけるべき点として、この作品には収録時間が43分のオリジナルLPバージョンと、CD化に伴いリミックスが施された47分のバージョンがあります。ぜひ47分あるバージョンを聴いてください。先述の名曲「The Gumbo Variations」がオリジナルLPバージョンでは16:55から12:53へと短く編集されていたためです。

Apple Music 等の配信では短いバージョンになっていますが、幸いにも「The Hot Rats Sessions」という作品名で「1987 Remix」として長いバージョンが収録されていますので、配信でお聴きの方は「The Hot Rats Sessions」のほうを聴くとよいでしょう。

Waka/Jawaka (1972)

ザッパのジャズ・フージョン時代の名盤です。この頃のザッパは、暴漢にステージから突き落とされて負傷するという事件にあって、車椅子生活を余儀なくされていたそうです。そうした背景から、通常のロックバンド編成ではなく、ジャズ寄りの大編成のバンドに向けた曲を書いたようです。

冒頭の17分あるインスト「Big Swifty」、ラストの11分あるインスト「Waka/Jawaka」に挟まれて、ヴォーカル入りの小品2曲が収録されている形です。サックスやトランペットといったブラス・セクションが大々的に使用されており、ヴォーカル曲ではコーラスも分厚く、非常に華やかな印象があります。ヴォーカル曲からラストの「Waka/Jawaka」へと一気になだれこむ流れは素晴らしいですね。

ジャズ・フュージョンに馴染みのある方は、このアルバムから聴いているのもよいと思います。

Apostrophe (‘) (1974)

ザッパ自身のヴォーカルがメインになった作品です。これはロックファンにも聴きやすいのではないでしょうか。ラジオでローカルヒットした曲なんかもあって、ザッパの代表作と言われることも多いようです。

歌詞がなかなかふざけた曲が多くて、ザッパのユーモア感覚が前面に出ています。パーカッションやキーボードの使用もユーモラスです。もし訳詞のついた国内盤が手に入るようでしたら、そちらにしてみるといいかもしれません。

タイトルトラックの「Apostrophe (‘)」のみインストで、クリーム Cream のジャック・ブルース Jack Bruce (Bass) とデレク・アンド・ザ・ドミノス Derek and the Dominos のジム・ゴードン Jim Gordon (Drums) が参加しています。

Roxy & Elsewhere (1974)

ザッパのライヴ盤といったらコレでしょう。カリフォルニアにある The Roxy Theatre というナイトクラブで1973年に行われたライヴを収録したものです。

とにかく異常に演奏レベルの高いライヴです。ザッパは一流のミュージシャンを数多く発掘し、また彼らに常に高いレベルの演奏を求めたことで知られていますが、ロックバンドというものがここまで高いレベルでライヴ演奏できるのかという点に驚きます。

ザッパとともに演奏しているミュージシャンは時代によって異なっていて、そこを聴き比べるのもマニアな聴き方としては面白いのですが、個人的にはこの時代がベストメンバーだったのではないでしょうか。曲もいいですね。「Village of the Sun」なんかは泣かせる曲です。

おわりに

さて、今回の記事の紹介としては以上です。気に入った作品は見つかったでしょうか。コアなファンの方からは「あのアルバムは紹介しないのか!」なんて声が飛んできそうですね。

ザッパの作品にはもちろん他にもたくさん名盤が存在するので、気になった方は他のネット上の情報などでより深くチェックしてみるといいでしょう。