John Cage – nova musicha n.1 John Cage (1974)

アメリカの現代音楽の作曲家、ジョン・ケージ John Cage (1912-1992) による1974年のアルバム。イタリアの Cramps Records より、現代音楽の意欲的な作品を発表するシリーズ「nova musicha」の記念すべきNo.1としてリリースされました。このシリーズはアートワークが非常に洗練されていて、本作はキノコのジャケットでも有名ですね。

これ、ジョン・ケージのベスト盤と言ってしまっても差し支えないんじゃないでしょうか。プリペアド・ピアノあり、サウンドコラージュあり、そしてかの有名な沈黙と静寂の音楽「4分33秒」も収録されています。

Tr.1の「マルセル・デュシャンのための音楽 Music For Marcel Duchamp (1947)」はプリペアド・ピアノによる作品です。グランドピアノの弦にゴムや金属を挟んで演奏するというアレですね。デュシャンというのは、かの有名なレディメイドの作品、便器を置いただけの「泉」で知られているあの人です。

Tr.2の「Music For Amplified Toy Pianos (1960)」はトイピアノによる作品。Tr.1、2とも瞑想的な鍵盤の作品で、けっこう普通に聴けます。普通に聴けるというのが褒め言葉になるのかどうか分かりませんが、「前衛的でわけの分からないもの」という感じではなく、しっかり音楽してます。

Tr.3は「ラジオ・ミュージック Radio Music (1956)」。これも良質なサウンドコラージュで、いい意味で聴いていると眠くなる作品です。ケージのバリバリのサウンドコラージュ作品というと、2010年にCD化された「Fontana Mix」などがありますが、本作のラジオ・ミュージックは6分と小さくまとまっていて聴きやすいです。

Tr.4はもうめちゃくちゃ有名ですね、「4分33秒 4’33” (1952)」です。この楽曲は実は3楽章あって、「0’30”」「2’23”」「1’40”」から構成されています。内容ですけど、本当に何も演奏しません。椅子に座って、途中で楽譜のページをめくるのかガタガタとした音がして、椅子から立ち上がって、終わりです。よくやるなあ、という感じです。

Tr.5の「Excerpt From ‘Sixty-Two Mesostics Re Merce Cunningham’ (1971)」は声楽の曲で、イタリアのプログレッシヴ・ロック・バンド、アレア Area のヴォーカリストであるデメトリオ・ストラトス Demetrio Stratos が演奏者です。アレアをご存知の方は少し想像がつくと思いますが、これってこの人以外に歌える人いるんでしょうかね。いないと思います。

本作は5曲入り38分と比較的コンパクトで、ジョン・ケージのさまざまな側面がよくまとまっている名盤だと思います。現代音楽の入門盤としていかがでしょうか。