発達障害の人が持つ「疲れやすい」という特性の原因と対処法

ASD(自閉症スペクトラム症)やADHD(注意欠陥・多動性障害)を持つ人の多くが抱えるのが、疲れやすさという特性です。今回はそんな疲れやすさと付き合っていく方法を考えてみたいと思います。

疲れやすさはなぜ起こるのか

なぜ私たち発達障害の当事者は疲れやすいのでしょうか。さまざまな理由が考えられると思います。まずは感覚過敏によるものがあります。騒がしい環境音による聴覚の刺激、慌ただしくとっ散らかったオフィスが見せる視覚の刺激などを、われわれの多くは無視することができません。

次にコミュニケーションの困難も私たちを疲れさせる原因に挙げられるでしょう。健常者の暮らす世界は私たちにとって外国のようなものです。相手が何を考えているのか、何を言わんとしているのか、私たちは常に必死で推測しなければなりません。自分の考えを伝えることもまた一苦労です。こうして私たちは、オフィスで丸一日でも働こうものなら、普通の人が丸一日海外出張して働いたかのようにぐったりしてしまうのです。

他にも認知特性による困難が挙げられると思います。この特性は人によって異なりますが、ある人は聴覚からの言語理解が普通の人のようにスムーズにいかなかったり、またある人は文字を読むことによる言語理解に困難を抱えています。私たちは得意不得意が激しいのです。言語理解の例でしたら、私たちが一日中言葉というものを使用しているという事実を思い出してください。不得意に該当する行為は日常生活で頻繁に訪れることが多く、これがまた私たちを疲れさせます。

その対策は

では私たち当事者が健康に働いていく上で、この疲れやすさとどのように付き合っていけばよいのでしょうか。

可能な限り残業を避けるというのは、おそらく多くの人に必要な対策です。私たちにとって、フルタイムの業務である「週に5日、8時間」という時間はそれだけで既に危険なほどに長すぎます

職場では「あの人は残業しない人なんだな」というイメージを作るとよいでしょう。繁忙期には最悪避けられない場合もあるかもしれませんが、可能な限り残業をせずに早く帰ってください。もしあなたがいわゆるオープン就労で、障害者雇用などになっている場合、残業時間への配慮は会社に真っ先に要望すべきことの一つです。

睡眠時間を死守しましょう。一般的な睡眠時間は8時間と言われますが、それより長い睡眠時間を必要とする人もいます。何としてでも睡眠時間を守りましょう。毎朝、熟睡感を感じて自然に目が覚めるようになるのがベストです。目覚まし時計に叩き起こされて、苦労しながら布団から出ているという状況は好ましくありません。

夜の時間帯に人と会う予定などは、できれば避けたほうがよいでしょう。不必要な飲み会などを断る必要も出てくるかもしれません。寝る前の数時間は、なるべく外界からの刺激を受けないようにするべきです。

人と会わない時間、何もしない時間を確保しましょう。確かに、いくら人付き合いが苦手な私たちとはいえ、友達付き合いは人生において重要なものの一つです。趣味の時間だって大切です。しかし、ときには休息に専念する時間が必要です。

この完全休息の時間は、あなたが思っている以上に必要かもしれません。土曜日の午前中など、特定の時間を完全休息の時間と定めてしまうのはよい方法です。会社の有休も遠慮せずにしっかり取りましょう。何かをするためではなく、休むために休むのです。

より根本的な対策

あなたがもし今働いている会社と合わないと感じたら、転職を考えるというのも一つの選択肢です。これは非常に難しい問題です。転職では、状況がよく悪くなるというケースもなくはないからです。

しかし、必要なのは環境に合わせて自分自身を変えるのではなく、自分自身に合わせて環境を変えることです。自分自身を変えようとする試みは、多くの場合、失敗に終わります。環境調整を第一に考えてください。

もしかしたら、あなたはフルタイムの仕事に耐えられない身体である可能性もあります。その場合は、時短勤務で働ける方法を探すといったことも必要になってくるかもしれません。これは非常に厳しい選択です。なぜ「普通の」フルタイムでの就労を諦めなければならないのか、と思うかもしれません。しかし、背に腹は変えられません。もしあなたが二次障害のうつ病などを深刻化させている場合、働き方の変更は現実に検討すべきものです。

おわりに

発達障害と疲れやすさについて、原因と対策を考えてみました。ポイントは休息の確実な確保環境調整です。

私はこの記事の他にもメンタルヘルス関係の記事をたくさん書いていますので、このブログの「発達障害」タグや「メンタルヘルス」タグもよろしければ参照してみてください。

あなたがこの社会でどうにか生きていく手段を見つけられることを願っています。