須貝知世 – Thousands of Flowers (2018)

東京を拠点に活動するアイリッシュフルートのプレーヤー、須貝知世さんによる2018年のアルバム。

これはなんというか、すごくやさしいアルバムですね。やさしい、あたたかい、やわらかい、そんな言葉が連想されます。私がよく聴く日本人のアイリッシュプレーヤーの演奏は、どこか影のある、いい意味でのアイルランド音楽独特の「暗さ」をとらえたものが多いのですが、このアルバムは「明るい」です。

それも底抜けな明るさではなく、落ち着いた明るさです。花の咲く草原が描かれたジャケットアートワークは、この音の風景を見事に象徴しているのではないでしょうか。そういえばアイリッシュの音源でジャケットアートワークが素晴らしいものってちょっと珍しいですね。

伴奏はギター、アイリッシュハープ、ピアノなどが入りますが、これもうまく抑制された調子で、楽曲の雰囲気にすごく合っています。普通のミュージシャンだったらもう少し強く主張してしまいそうな気がしますが、ここは見事です。

フルートの音色は先の印象にも書きましたように、非常に当たりがやわらかいです。きっとケーリーバンドのような合奏よりも、こういった少人数での演奏が映えるタイプですね。録音の音圧も強くなく、空間に十分な余白が与えられている印象で、聴いていて心地よいです。

日本人奏者によるアイリッシュフルートの名盤と言えると思います。おすすめです。