ある朝、突然会社に行けない状態になったら

この記事は、メンタル不調で「ある朝、突然会社に行けない状態になった」という方に向けて書かれています。筆者は専門の精神医療関係者ではなく、実際にそのような状況を経験した一当事者です。同じような境遇の方のお役に立てればと思い、この記事を書いています。

この記事を見つけられたということは、会社に行けなくなりましたか。ベッドから起きられなくなってしまったでしょうか。おそらくあなたがそのような状況なら、自分の状況をうまく説明できないほど参ってしまっている可能性が高いと思います。なんだかよくわからないけれど苦しくて死にそうだ、という状況になってしまっていないでしょうか。

まず、最初のステップとして会社に体調不良で休むことを連絡しましょう。電話一本かけることすら辛くて難しい、という場合もあるかもしれません。そのような場合はメールで連絡する、上司への連絡が難しければ同僚を通じて連絡する、家族を通じて連絡するなどの方法を取るとよいと思います。連絡なしに欠勤してしまうと、会社側はあなたに何か通勤中の事故があったのかと心配するかもしれません。辛くてもなんとか会社への連絡を済ませましょう。理由をうまく説明できなくても、とにかくお休みの連絡を入れることが大切です。

会社への連絡が済んだら、精神科または心療内科のクリニックを受診しましょう。お近くのクリニックや病院を検索してみてください。できれば予約不要ですぐに初診を受け付けてくれるクリニックが理想です。クリニックによっては、予約がないと来院しても当日受け付けてくれない場合もあります。またクリニック選びは先生との相性などもありますが、初診の時点では「時間的にも地理的にもすぐに受診できるクリニック」を優先したほうがよいでしょう。

メンタル不調は身体の病気と同じく、誰にでも起こりうる問題です。もしあなたが精神科や心療内科といった受診科に抵抗があったとしても、会社に行けないという事態は明らかに治療を要する状態だと思われます。あなたの身体は悲鳴を上げています。医師はあなたの状態を社会的に証明してくれる唯一の存在です。もう無理だ、と思ったら迷わず医師の診察を受けてください。

受診の目処は立ちましたか。診察が始まったら、会社に行けなくなったことを先生にお話しましょう。また最近ご自身が感じられている不調についてお話ししましょう。食欲がない、眠れずに夜中や早朝に起きてしまう、疲労感が取れない、といった症状がないでしょうか。特に、もう生きているのが辛い、死にたい、と思うことはありませんか。メンタル不調は客観的な判断力を失わせる傾向があり、「これくらいのストレスは誰でも耐え忍ぶべきだ」「耐えられないのは自分が弱いだけだ」といった考えを起こしてしまいがちです。しかし、会社に行けない、死にたいと思う、といった状況は明らかに緊急事態です。あなたが弱いせいではありません。感じていることを率直に先生に伝えてください。

先生に状況を話すことができたら、おそらく会社を休むための診断書を書いてもらえると思います。「うつ状態により○月○日まで休養を要する」といった書類です。会社は働く人々の健康に配慮する義務があり、この書類が会社に提出されたら、会社はその人を休ませる必要があります。先生は診断書にウソは書けません。この診断書が出たら、客観的に見てあなたは会社を休んで休養する必要があるということを、専門家の先生が判断したということになります。

会社を休むことに不安はありますか。周りの人に迷惑をかけてしまう、と思っていませんか。それは多少なりとも事実かもしれませんが、今のあなたが考えているほど重大なことではありません。急病人が出たときに、その穴をうまくカバーするのは会社の責任です。何よりあなたは医学的に見て治療を要する状態であり、身体的な急病人と何も変わりはありません。まずは休むことを最優先してください。会社に診断書が出た旨を伝えて、郵送などで会社に診断書を提出しましょう。

お薬が出たら、指示どおりに服用しましょう。ゆううつな気分を緩和する抗うつ薬、不安な気持ちを和らげる抗不安薬、よく眠れるようになる睡眠導入剤などが処方されると思います。薬が効いてくるまでには数週間かかる場合があり、また薬は個人との相性もあるので、よく効かない場合は薬の種類が変更になることもあります。少なくとも、「薬を飲んだらたちどころによくなる」という期待はしないほうが無難です。

いつまで休めばいいのか不安ですか。診断書に書かれた「○月○日まで」というのはその時点での先生の判断であり、通常はすぐに回復しなければ、再び期間を延長した診断書を書いてもらえることが一般的です。会社を休み始めた場合、それまで張りつめていた緊張の糸が一気に切れて、一時的にむしろ症状が悪化したように見えることもあるかもしれません。一般的なうつ病の場合、治療を開始してから症状が回復するまで3〜6ヶ月かかると言われることがあります。この治療期間も当然、個人差があります。メンタル不調の治療は長期戦です。焦らずじっくり治療を開始してください。

経済的な面が不安ですか。多くの会社では、会社を長期間休む場合には休職という制度があり、すぐに雇用が失われるというケースは少ないはずです。また、休職期間中は多くの場合お給料が出なくなる代わりに、会社の健康保険組合に傷病手当金という制度があります。支給開始から1年6ヶ月の間、給与の3分の2にあたる金額が保障されます。休職制度と傷病手当金制度については、会社の人事・総務の方がご存知だと思いますので、診断書提出のやりとりが済んだら、追ってお話していくといいでしょう。

長くなりましたが、メンタル不調で会社を休み始める場合の流れとしては以上のような感じになるでしょう。病気のことについては、今は書籍やネット上の情報などが充実していますので、追って勉強していけばいいと思います。

最後に、どれだけ辛くても自死だけは選ばないでください。メンタル不調は不治の病ではありません。きっといつかよくなります。この記事があなたの置かれた状況に対して、少しでも力となれることを希望します。