小松大 & 山本哲也 Dai Komatsu & Tetsuya Yamamoto – Shadows and Silhouettes (2018)

日本が誇るアイリッシュフィドル奏者・小松大さんとギターの山本哲也さんによるデュオの作品。デュオの結成は2015年です。2016年に1stアルバムの「Years」をリリースしており、本作品「Shadows and Silhouettes」は2018年の2ndアルバムに当たります。

1stの「Years」は比較的輪郭のはっきりした元気なアルバムだった印象ですが、この2ndはタイトルどおり「影」ですね。アイルランド伝統音楽に静と動の側面があるとすれば、本作品は間違いなく「静」のほうをとらえた名盤だと思います。1stが全9トラック35分と短めだったのに対して、2ndでは全14トラック57分となっているあたりもこのデュオの円熟を示唆しているのではないでしょうか。

小松さんがときおりフィドルをヴィオラに持ち替え、また山本さんによるギターソロのトラックが挟まれる構成は前作から変わっていませんね。このデュオの魅力です。

小松さんはアイルランドのクレア Clare の音楽を非常に深く研究されたそうで、このアルバムの音楽性にもそれは滲み出ていると思います。クレアといいますと、有名どころではマーティン・ヘイズ Martin Hayes 、タラ・ケーリー・バンド Tulla Ceili Band などが挙げられますが、その辺りの音楽が好きな人にはぜひおすすめしたいアルバムです。

個人的なベストトラックはラストの「Con Cassidy’s Waltz」です。言葉も出ないほど美しいです。

Liz Carroll – Lake Effect (2002)

アイルランド系アメリカ人のフィドラー、リズ・キャロル Liz Carroll による2002年のアルバム。ギター伴奏はおなじみのジョン・ドイル John Doyle です。

全体的に明るいトーンで、非常にとっつきやすいアルバムです。アイリッシュフィドルの入門盤にいいのではないでしょうか。

アルバムの開始を告げる軽快な「The Rock Reel」、アコーディオンとの併走が美しい Slide の「Anlon McKinney / Mind The Dresser」、分厚く重ねられたストリングスのサウンドが印象的な表題曲「Lake Effect」など、多くの曲がリズ・キャロル自身の作曲によっています。作曲者としてのリズの魅力も味わえる名盤です。

ギターのジョン・ドイルとの共演では、他にも「In Play」(2005)、「Double Play」(2009) といった作品があります。気になった方はぜひそちらもチェックしてみてくださいね。

Meat Puppets II (1984)

アメリカのアリゾナ州フェニックスで結成されたバンド、ミート・パペッツ Meat Puppets が1984年にリリースした2ndアルバム。グランジの隠れた名盤です。

同じくアメリカのバンド、ニルヴァーナ Nirvana がMTV Unplugged in New Yorkで「Plateau」「Oh, Me」「Lake of Fire」の3曲をカバーしたことで知られています。ニルヴァーナのカート・コバーン Kurt Cobain はこのアルバムを「生涯最高のアルバムの一枚」に挙げていたとか。

サウンド的には、彼らが1stアルバムで見せたノイジーでハードコアな音から、アコースティックでスローなナンバーまで、バラエティに富んでいます。特筆すべきはやはりニルヴァーナのカバーした3曲でしょう。「Lake of Fire」は「悪い奴らは死んだらどこへ行くの? 天使の飛んでいる天国へは行けないね」という歌い出しで始まります。彼らは Lake of Fire、つまり炎の湖へと行くのだと歌っているのです。

「Lake of Fire」は1994年に再録されたものがシングルでリリースされており、同年の8thアルバム「Too High to Die」の隠しトラックとしても収録されています。

オリジナル盤は12曲のアルバムで、トラック13〜19が収録されているものは追加のボーナストラックになります。