アクティブ投資とパッシブ投資、どっちがいいの?

二項対立で語られるアクティブ投資とパッシブ投資ですが、結局どちらがいいんでしょうか。

まず用語の解説ですね。アクティブ投資とは、簡単に言えば自分で投資する銘柄を個別で選ぶことです。この会社の株価はきっと上がる! と思ってその株を買うなら、それはアクティブ投資です。ちなみにその銘柄選び自体をプロの人に任せてしまう「アクティブ運用ファンド」の話もあるのですが、それはいったん話の外に置いておきます(記事の末尾で補足します。)

それに対してパッシブ投資とは、自分で個別銘柄を選ばずに、市場のインデックスに追従する投資信託やETFを買うことです。インデックスというのは日本国内だと日経平均株価やTOPIX、米国だとダウやS&P500などですね。

私はいっときアクティブ投資を専業とする個人投資家として生活していたことがあり、これはもう自信を持って言えます。パッシブ投資のほうがいいに決まってるでしょう!!

あれ、意外ですか? そうです、アクティブ投資じゃないんです。はっきり言ってアクティブ投資は、労力の割りに合いません。投資のプロに訊いてもそう言うと思います。その人が正直者ならね!

株式投資は短期的にはゼロサムゲーム、長期的にはプラスのゲームです。ゼロサムゲームと言うのは、誰かが得をしていれば誰かが同じ額だけ損をしているということですね。厳密な「適正な株価」というのは誰にもわかりません。株式の売買が行われているときは、たいてい適正価格より高くて買い手が損をしているか、適正価格より安くて売り手が損をしているかのどっちかです。

さて、あなたはご自身が常に「賢い側」にいる自信はありますか? 投資のプロがひしめくマーケットの中で、平均点以上を出せるという自信はありますか?

「ない」と答えた方は正直な方です。「ある」と答えた方については、ぜひ信じる道を突き進んでください。結果は知りませんけど。

これを読んでいる方の多くは、おそらく普通の会社勤めをしている人でしょう。週末などの限られた時間の中で、フルタイムの投資のプロに勝てるような財務分析などはできるはずがない、と思うのはごく自然なことです。

そこで出番なのがパッシブ投資です。パッシブ投資はゼロサムゲームを無視して、市場の平均点を買います。これって実はすごいことなんですよね。たとえばあなたが今、平均的なプロ野球選手の年俸がほしくて平均的なプロ野球選手の身体能力を身につけようといったって、それは無理な話です。ところが投資の世界では、健全な知識と精神があれば誰でもプロの平均点を叩き出すことができるというチートのような話が存在するんですね。それがパッシブ投資、いわゆるインデックス投資です。

残念ながら日本国内の株価は長期に渡って低迷してきた時期が多かったため、「でも日経平均ってそんなに上がってないんでしょ?」といった声が聞こえてきそうですね。しかし絶え間ない効率化と価値の創出が進むこの世の中では、世界的に見ると株価というのは基本的に「ギザギザを描きながら徐々に右肩上がりしていくもの」なんですね。MSCI World Index のリターンなどを見ていただくと、長期で見れば年利数%相当のリターンが続いていることがよくわかると思います。全世界に分散されたインデックスを買えばいいわけですね。

というわけで、投資はパッシブ一択です。「次に来る銘柄はコレだ!」みたいな記事があったらガン無視してください。パッシブ投資、インデックス投資の具体的な方法については、私の書いた記事で「簡単で確実な投資の方法とは」というのがありますので、そちらも参考にしてくださいね。

補足:話の外に置いておいたアクティブ運用ファンドは?

先に触れたアクティブ運用ファンドもアクティブ投資ですが、プロの人(ファンドマネージャー)が銘柄選びをするなら大丈夫なのではないか、という人もいるかもしれません。でもね、そのファンドマネージャーが「勝っている側の人」だとどうやって判断するんでしょう? ゼロサムゲームの世界では、プロの人であろうと半分は負けています。不確実性の高い投資の世界では、仮に直近のほんの数年の成績がインデックスを上回っていたとしても、それが偶然なのかファンドマネージャーの実力なのかを識別することはほとんど不可能です。

パッシブ運用でそれなりのリターンが想定できる中で、わざわざ追加のコスト(ファンドマネージャーへの報酬)と追加のリスク(ファンド選びは果たして正解だったのか?)を払ってまで、アクティブ運用ファンドを選択する理由はそれほどないと思います。

株式投資入門: 簡単で確実な投資の方法とは

いきなりタイトルで大きく出ましたね。簡単で確実な投資の方法についてです。

初めにお断りしておくと、「確実」というのはリスクがないという意味ではありません。必ず儲かるという意味でもありません。リスクはリターンの本質であって、リスクなしにリターンが欲しいというのは「空からお金が降ってこないかなあ」と思うのと同じです。

それを踏まえた上で、投資というものには王道というか一応の最適解というか、そういうものが定説として存在しています。地味だからあまり言われないんですけどね。やればおそらく儲かりますが、証券会社の営業マンが儲かるわけでもないので、「これ儲かりますよ」と誰かがあなたに勧めてくれることもありません。

ズバリ書きます。可能な限り非課税の口座で、コストの安い投資信託で「全世界株式のインデックスファンド」をドルコスト平均法で定期購入し続けて、可能な限り長期間保有すること。これが投資の王道です。

わからない言葉が出てきましたか? 調べましょう。はっきり言いますが、自分で調べようという気にならない人はあまり投資には向いていません。「おいおい、それを解説してくれる記事じゃないのかよ!」と思われた方はすみません。しかし「投資信託とは?」「インデックスファンドとは?」「そもそも証券口座ってどうやって開くの?」といった質問にひとつひとつ答えていたら、膨大な内容になってしまいます。幸いにも、用語を解説するだけの記事は世の中に溢れています。ここでは重要な指針を示すのみにとどめましょう。

繰り返しになりますが、自分で調べましょう。投資は心理のゲームです。ここで述べられる投資の王道は、証券会社の口座を開いて少し設定をしてしまえば、あとはほとんど手間などかかりません。物理的にやるだけなら誰でもできます。しかし、心理的にやれるかどうかは話が別です。何百万円という自分のお金をリスクにさらせるか? わかりやすい失敗例として、市場の暴落時に長期保有という前提を守れずに投げ売りしてしまうという例があります。下落相場で何十万円という含み損が出ているのに投資を続けられるか? すべてはあなたの知識と確信の強度にかかっています。調べましょう。本気でお金を儲けたいと思っているならできるはずです。

さて、先に述べた方法にはいくつかキーワードが出てきましたね。これがそのまま重要な点です。箇条書きにしてみます。

  • 可能な限り非課税の口座(NISAやiDeCo)を使用し、税金を安く抑えること。
  • 可能な限りコスト(手数料や信託報酬)の安い投資信託を利用すること。
  • 商品は(債券でも不動産でもゴールドでもその他諸々でもなく)株式を選択すること。
  • 可能な限り全世界に幅広く分散された株式インデックスを購入すること。(市場の分散とパッシブ投資)
  • 一定期間おきに一定額を定期購入すること。(ドルコスト平均法。時間の分散と自動化)
  • 可能な限り長期間、売却せずに保有し続けること。(リスク低減および複利効果)

これらのすべてが重要です。今はよくわからなくても、勉強するときにときどき見返すようにしてみてください。

ジェレミー・シーゲル教授が著書「株式投資」で明らかにしたところによると、過去200年間にわたる米国株の実質リターンは年利にして7%程度だったといいます。複利のマジックを知っている方は、年利7%と聞くと、株式投資には恐ろしいパワーが秘められていることに気がつくでしょう。電卓で「×1.07」を繰り返していただくとわかりますが、これはおよそ10年で2倍になる計算です。「株式投資、なんでやらないの?」といったレベルです。

さて、手っ取り早くこの投資方法を実現する手段ですが、これも簡単に述べることができます。三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・ カントリー)」を毎月定額で積み立てるようにし、あとは放っておく。もちろんあなたがこれを読んだ時点で、eMAXIS Slimよりコストの安いインデックスファンドが登場している可能性はあります。毎月いくら積み立てればいいの? という疑問もあるでしょう(ちなみにこれに対する私の回答は「収入が許す限界まで」です)。また、「全世界株式より米国株式のほうがリターンが良い傾向があるのでは?」といった議論もあります。このあたりの細かい点は、追い追い勉強ということでよいでしょう。

このページをご覧になった方が、どの程度投資の知識をお持ちなのかはわかりません。銀行預金ではスズメの涙ほどの利息しかつかないこのご時世、年利7%という数字に驚かれた方も多いのではないでしょうか。あなたが若い人で、100万円のまとまった貯金をようやく作ることができたとしたら? あなたが働き盛りの世代で、1000万円の預金を眠らせているとしたら? 株式投資はきっと有力な選択肢になるでしょう。

先にも書きましたが、投資は心理のゲームです。1000万円という数字に7%という数字を当てはめて、年間70万円の不労所得だ! 10年後には複利で2000万円だ! と考えることはできます。しかし、日によって数十万円、運が悪ければ長期間にわたって数百万円の含み損が発生するかもしれないという状況にあなたは耐えられるでしょうか? 繰り返します。すべてはあなたの知識と確信の強度にかかっています。勉強しましょう。本を読みましょう。すべてを疑って、納得のいくまで知識を確かにするのです。そうすればたぶん、あなたは新しい種類の自由を手にすることができるかもしれません。

株式投資の世界へようこそ!

Caitlín Nic Gabhann – Caitlín (2012)

カチュリーン先生こと Caitlín Nic Gabhann による2012年のソロアルバム。

これはちょっと、ヤバい作品ですね。普通にコンサーティーナ弾いてる人はこの人のテクニックを聴いたら軽く絶望するんじゃないでしょうか。ジャケットの写真を見る限り、アングロコンサーティーナの最高峰である Jeffries の楽器を使用しているんだと思いますが、それにしても演奏が美しすぎませんか。1曲目の Reel の装飾音から飛ばし過ぎです。

Tr.8の美しいワルツ、「Sunday’s Well」はカチュリーン自身の作曲によるものだそうです。これだけ弾けて作曲までできちゃうなんてずるくないですか?(ずるい?)

個人的なベストトラックはTr.10の「O’Flaherty’s / The Wily Old Bachelor / The Japanese Hornpipe」かな。コロコロ転調していて、ラストの「The Japanese Hornpipe」は楽譜に起こしてみたら♯が4つ付いてました。よく弾くなあ、という感じです。

華やかで聴きやすいアルバムなので、アイリッシュのコンサーティーナってどんな感じなの? という方におすすめしたいです。

Angelina Carberry & Martin Quinn (2003)

バンジョー奏者の Angelina Carberry とアコーディオン/メロディオン奏者の Martin Quinn による2003年のアルバム。

名盤ですね。アコーディオンとバンジョーという組み合わせはそう多く聴いたことはないのですが、アルバム1枚の中でこんなにも多彩な音作りができるのかとびっくりしてしまいます。

Angelina Carberry はイングランドのマンチェスター出身。Martin Quinn は北アイルランドのアーマー出身で、Quinn ブランドでアコーディオンの販売をしていたり、リペアを行ったりしているようです。

Angelina Carberry のバンジョーはテクニカルで音にメリハリがあって、すごくいいですね。Martin Quinn のアコーディオンも流れるような演奏で素晴らしいです。全曲を2人で弾いているわけではなく、バンジョーのソロトラック(といいつつギター入りですが)、アコーディオンのソロトラックなども織り交ぜられており、聴き手を飽きさせません。

注意が必要な点として、Apple Music や Amazon 等のデジタル配信ではトラック7と8の曲名が誤って入れ替わっています。正しくはTr.7の Air が「Aililiu na Gamhna」、Tr.8の Reel が「Finbar Dwyer’s」です。

個人的なベストトラックはTr.8の「Finbar Dwyer’s」かな。勢いがあって聴かせる曲です。Tr.12の「McNamara’s / The Carricknagavna Barndance」もかわいらしくていいですね。

Chris Cornell – Songbook (2011)

サウンドガーデン Soundgarden やオーディオスレイヴ Audioslave のフロントマンとして知られるクリス・コーネル Chris Cornell による2011年のライブアルバム。なんと全編、ギター一本によるアコースティック演奏です。同じグランジ勢として知られたニルヴァーナ Nirvana の Unplugged Live を彷彿とさせます。

いやー、これはすごい作品です。めちゃくちゃ聴きました。先述のニルヴァーナのカート・コバーン Kurt Cobain は、サウンドガーデンを評して「あんな奴らにかないっこない」と言ったという話をどこかで読んだ気がしますが、こんなすごい人が歌ってたんじゃあね。

楽曲はサウンドガーデン時代のもの、オーディオスレイヴ時代のもの、ソロ時代のものなどから幅広く取られています。意外とオーディオスレイヴ時代の曲が多いですね。アコースティック向けにアレンジがされていて、これまた原曲とは別の味があります。

クリスの歌声はとにかく、シャウトがすごいですね。静かに歌っている曲が中心だからこそ、逆に声を大きく張り上げた場面で、ロックシンガーとしての実力の深さが際立っている気がします。Tr.1の「As Hope And Promise Fade」やTr.3の「Call Me A Dog」あたりが顕著でしょうか。背筋がゾワっとします、本当に。

ライブテイクはTr.15の「Imagine」(言わずと知れたジョン・レノン John Lennon のカヴァー)で終わり、最後に一曲だけスタジオ録音されたTr.16「The Keeper」にてアルバムは幕を閉じます。

サウンドガーデンやオーディオスレイヴを好きな人にはマストの作品でしょう。作風はハードロックのそれとは異なりますが、クリス・コーネルがいかに偉大なシンガーだったかがありありとわかる一枚です。