投資の世界に限らずですが、世の中は「あれをしなさい」「これをしなさい」という言説で溢れています。ある人はあっちに行けと言い、ある人はこっちに行けといいます。それぞれの言うことが矛盾しているなんてことはザラです。
特に投資という行為には、人間の欲がからんでくるため余計に難しいのです。より多く儲けられるという話があったら、そちらに目が向いてしまうのは人間の悲しい習性です。
あなたはどうやって投資の「正しいゴール」にたどり着くことができるのでしょうか。ここでは投資の初心者に向けて、いくつかの指針となる考え方を示したいと思います。その上で、おすすめのポートフォリオについても最後に触れたいと思います。
投資の世界は勉強の世界
まず、あなたがこれから踏み出す投資の世界というのは勉強の世界だということをよく覚えておきましょう。あなたはおそらく少額の投資から始めるでしょうが、もし本格的に投資を行うのでしたら、あなたは数百万円、ひょっとしたら数千万円というお金をリスクにさらすことになります。
そしてその場合、ときには数十万円、数百万円といった額の評価損、いわゆる元本割れというものも経験するかもしれません。そのときあなたを不必要な動揺から守り、安心させてくれるのは、自分の血肉になるまで勉強した、確固たる根拠のある知識だけです。ニュースはあなたの不安を煽るかもしれません。より確実に儲かるといった、特に根拠のない儲け話があなたを誘惑するかもしれません。
投資の世界は心理の世界
これは同時に、投資の世界が勉強の世界であると同時に心理の世界であることを示しています。「1,000万円を投資したら、評価額が800万円になった」と想像してみてください。この想像上の「200万円の評価損」は、本当に現実に「200万円の評価損」を経験した際の痛み、動揺、混乱とはまったく異なります。
現実にリスクというものの痛みに対処するには、あなたは現実に痛みを経験する必要があります。言葉の上で言えることと、実際にできることは異なります。投資を少額から徐々に行なっていくことが推奨されるのはこのためです。少額で少しずつ成功しながら、また少しずつ失敗しながら、徐々に慣らしていくのです。
確固たる根拠に基づいた知識を習得することと、それを実践できる安定した心理を身につけること。知識とメンタルは投資を行なっていく上で両輪です。
勉強すべきは株式のインデックス投資
さて、世の中には「この株を買いなさい」「不動産投資を行いなさい」「ゴールドを買いなさい」といったさまざまな言説があふれています。特定の何かをする方法を学ぶ前に、そもそも何をするべきかという点で意見がまったくバラバラなのです。投資の初心者は、勉強するといっても一体何を勉強すればいいのでしょうか。
投資の世界には、特殊な才能と運を必要とせず、特別大きなリスクや労力も必要としない、王道とも言える方法が存在します。それは株式のインデックス投資です。
まずは株式のインデックス投資について勉強してみてください。それ以外の「○○を買いなさい」といった言説はいったん無視して、インデックス投資の有効性についてとことん調べてみてください。その他の言説については、インデックス投資について一通り勉強したあとで調べてみればよいでしょう。
「インデックス投資について勉強してください」というのは、私から贈れる最大のギフトです。念のために言いますが、投資の世界では騙されることもあります。この記事は一個人が趣味で書いているもので、なるべく客観的な記述を心がけていますが、それでもこれを読んでいる人にとっては見ず知らずの人の書いた文章です。疑ってください。投資の世界ではそれも不可欠です。
その上で、インデックス投資の根拠についても疑ってみてください。しかし、私はお約束してもいいのですが、おそらくインデックス投資は混沌とした投資の世界の中で、あなたが最も納得できる方法である可能性が高いです。
おすすめの本は
株式のインデックス投資について勉強するとき、まずはどういった本から手に取ればいいのでしょうか。
私がおすすめしたいのは橘玲の「臆病者のための株入門」です。投資について面白おかしい話も交えながら、しかし投資の本質を押さえたすぐれた解説書で、最終的には「経済学的にもっとも正しい投資法」について解説しています。ここで言う「経済学的にもっとも正しい投資法」とは、全世界市場に分散した株式のインデックス投資のことを指しています。
もう一冊外せないのが、ジェレミー・シーゲルによる名著「株式投資」です。先に挙げた本が新書だったのに対して、こちらは少しアカデミックな本と言えます。シーゲルは株式や債券、ゴールド、現金といった各資産への投資が実際にどのようなリターンをもたらしてきたかについて、米国の過去200年以上に渡るデータをもとに分析するという恐るべき仕事をしています。この本でも、株式インデックスへの投資の有用性が非常に説得力を持って展開されています。
また私が過去に書いた記事では「株式投資入門: 簡単で確実な投資の方法とは」にインデックス投資のエッセンスをまとめています。また「インデックス投資の平均利回りはどれくらい?」の記事や「インデックス投資と複利効果のシミュレーション」の記事も参考になるでしょう。
おすすめのポートフォリオは
ここまでに述べた勉強法を実践してみると、あなたは「株式へのインデックス投資の有用性」と「可能な限り市場を分散させることの重要性」を理解しているはずです。そこからの帰結として、おすすめするポートフォリオは一つです。
全世界株式のインデックスファンドを一本だけ買っておけば大丈夫です。複雑怪奇に見える投資の世界で、この結論はあまりに簡単なものに見えるかもしれません。繰り返しになりますが、この結論もご自身の勉強によって確かめてください。
具体的なインデックスファンドの名前については、私が過去に書いた記事「投資初心者におすすめのインデックスファンド」に詳しいので、そちらをご参照ください。
おわりに
少しはご参考になったでしょうか。投資の世界には、あなたを惑わす情報が山のように存在しています。ここで紹介した情報をもとに、あなたがなるべく道に迷わずに投資の知識を習得していけることを望んでいます。