みんなすぐに何か手に入ると思ってる
この世で何か価値のあるものを得たいと思ったときに必ずぶつかるルールがあって、それは「価値のあるものを得るためにはすごーく時間がかかる」ということです。大切なものがすぐに手に入るはずがないのに、簡単に手に入るようなものが貴重であるはずがないのに、みんなみんな本当にすぐに何かを欲しがります。
人間が1日でできることっていうのは、現実にはびっくりするほど少ないです。だから3ヶ月間積み重ねたことも意外と少ないし、1年間積み重ねたことだって改めて見返してみればやはり少ないです。私たちは自分があまり多くのことをやっていないということを自覚していなくて、本当に少しのことをやっただけで、手に入らないという事実にがっかりして諦めたりしてしまいがちです。
たとえば英会話を身につけたいと思ったとき、「3ヶ月でできるはずだ」と思う人はいないと思います。たぶん、ほとんどの人は10代の早いうちから義務教育で実際に英語というものに接するので、それが簡単に身につくものではないという事実を理解するのでしょう。人間はその手で長い間取り組んだことのあるものに対しては、比較的現実的な見方をすることができます。
ただ、これは例外的なほうで、自分の人生で本当にやるべきことを見つけるとか、本当に大切な人間関係を見つけるだとか、そういう抽象的で大きくて困難な課題に対しては、やはり人間はどこかで甘く見積もりがちです。「そんなにあっさり手に入るとは思ってないよ」と口では言うとしても、頭ではわかっていると言っても、心のどこかで「案外そのうち見つかるんじゃないか」と思っているんです。
諦めなければ成功するのか?
「決して諦めるな」というのは、スポーツやビジネスの分野での成功者がよく言うことですね。ただ、これには生存バイアスというのがかかっていて、最終的に自分が成功したという事実がわかっているからそう言っているだけです。実際にはスポーツでもビジネスでも、圧倒的に多いのは勝者ではなく敗者です。人には適性というものがあるし、勝負の流れはいつでも偶然にも左右されるので、限りある人生を負け戦に費やすということはするべきではないです。
成功が約束されることは決してありません。「努力は必ず報われる」と言えば、それは嘘を言うことになります。しかし、何もしなかった者が何かを得るということも、基本的にはないのです。
いつでも成功を信じてポジティブでいろというのは無理で、強い信念を持つということは現実に対処する柔軟さを失うということでもあります。だからそういう極端で無理のある立場を取らず、淡々とやりましょう。自分が何かをするということは、不確実だし間違っているかもしれないけれど、とにかくそうすることの中にしか意味のあることは見つからないんだ、ということを信じて、淡々とやるんです。何か価値のあるものを得ようと思ったら、そうするしかないように思います。
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