MOL53 – ANTITHESIS (2016)

現在はRAWAXXXのMCネームで知られる、MOL53による2016年の2ndアルバム。全編がトラックメイカーの呼煙魔によりプロデュースされています。

これは大名盤ではないでしょうか。ひたすらにカッコいい。反骨のリリックのTr.3「Swisher Sweet Sh※t」、和風のトラックに客演のラップが光るTr.4「Self Control feat. AKATSUKIi & TYK(ODJ)」、流れるようなフックが強力なTr.5「Ill Bred Soul」など、アルバム前半から飛ばしていきます。

Tr.7「Operation feat. DOWNTOWN SWINGAZ」は本作のハイライト。DOWNTOWN SWINGAZについては別の記事で触れましたが、雄火によるラップと呼煙魔によるスクラッチがめちゃくちゃにカッコいいです。これを聴くためだけにでも本作を手に取ってほしいほど。

Tr.10「MeltDown」はシンプルなトラックにMOL53のラップが映える曲。Tr.15「Justice」はトラックもリリックも素晴らしいです。エンディングのTr.18「Keep It Real -OutLow-」も見事。

MCバトルだけでは決して味わえない、MOL53のアーティストとしての実力が表れた名盤です。

RAWAXXX – 未発表曲集EP [53] / Kidz Return / Meeee

2018年の名盤「City of West」を最後にMOL53としての活動を終え、新たなフェーズへと入ったRAXAXXX。今やジャパニーズ・ヒップホップ・シーンを代表するアーティストと言ってよいでしょう。

RAWAXXXは2019年から2020年にかけて、「未発表曲集」と題したEPを3枚リリースしています。順にそれらの作品について見ていってみましょう。

[53] EP (2019)

5曲入り14分、2019年のEP。ジャケットには「2019未発表曲集」とあります。

Tr.2「Open The Eye’s」では今までの彼と少し違う表情を見せていますね。ラップがいい意味で落ち着きを見せているというか、渋い感じになっています。Tr.4「Test」にも同じ印象を受けます。

トラックメイカーは5曲すべて違っています。Tr.5のMSROのビートはなかなか面白い出来になっています。

Kidz Return EP (2019)

7曲入り20分、2019年のEP。こちらもジャケットには「2019未発表曲集」とあります。

Tr.1「Adivistory」、Tr.2「Think About/New Day」と、温度の低いひんやりとした印象のトラックが並びます。Tr.5「Daily」は短い曲ですが、身の回りの景色を描写したリリックが秀逸です。Tr.6「Fresh -Remix-」には前向きなメッセージも。

トラックメイカーは全曲とも5HUH31。明るめな音色のシンセの音使いが上手いなと感じますね。

Meeee EP (2020)

7曲入り21分、2020年のEP。ジャケットには単に「未発表曲集」とありますが、2020年の未発表曲集でしょうか。

20分少々のEPですがイントロ・アウトロのトラックを含みます。Tr.1「INTRO」から、先述の2枚のEPに比べると勢いのある印象ですね。Tr.6「Me」はリリックが印象的です。

トラックメイカーはOniPureOneLine、Zangi、Rack、呼煙魔の4名。OniPureOneLineのトラックはガチャガチャした印象が少し面白いです。

Lucy Farr – Heart & Home – Irish Fiddle Music From Lucy Farr

アイルランドのゴールウェイ County Galway 出身の伝説的なフィドル奏者、ルーシー・ファー Lucy Farr。Lucy Farr’s Barndance の曲名で有名なあの人です。生まれは1911年だそうです。

このアルバムは当初カセットでリリースされた作品ですが、その後にデジタル配信でリリースされたため、入手は容易となっています。

古い音源にありがちですが、2分前後の短めの録音が多いですね。全25曲収録で51分となっています。曲目はリールが中心で、次に多いのがジグ、残りはホーンパイプやマーチ等が少々。

曲単位で面白いものを挙げると、Tr.3の「Sliabh Aughty」のマーチ。これは演奏者から見ると弾いていてとても楽しいマーチで、セッションなんかで出すと盛り上がると思います。日本国内のどこかのセッションでは、この曲を最後に必ず演奏して〆にする、と小耳に挟んだことがあります。

リールの演奏だとTr.6「Paddy Fahey’s」、Tr.20「The Hunter’s Purse/The Hare’s Paw」あたりがいいですね。

Tr.9「Gan Ainm (Lucy Farr’s Barndance)」は彼女の名前がついた有名なバーンダンスです。Tr.10「Frank Downey’s」のホーンパイプ、Tr.24「Martin Kirwan’s」のマーチあたりもよい演奏ですね。

アイリッシュ・フィドルの名盤として、一度は聴いておいて損はないのではないでしょうか。

Dixie Dregs – Live At The Montreux Jazz Festival 1978

ギターのスティーヴ・モーズ Steve Morse を中心としたジャズロック・バンド、ディキシー・ドレッグス Dixie Dregs。1978年のモントルー・ジャズ・フェスティバルのライヴで、DVDとデジタル配信による音源がリリースされています。

ジャズロックの大名盤だと思います。基本的にはギターとヴァイオリン、そしてキーボードが楽曲をリードしていますが、ベースとドラムもめちゃくちゃに上手いです。テクニカルであると同時にエンタメ性も忘れておらず、楽曲もすごくいいです。

バンドのラインナップは以下のとおりです。

  • Steve Morse (Gt)
  • Allen Sloan (Vn)
  • Andy West (Ba)
  • Rod Morgenstein (Dr)
  • Mark Parrish (Key)

DVDで見てもショーとして一級品ですし、音源で聴いてもまったくアラのない演奏で驚いてしまいます。音源だけ聴くと、観客の拍手と歓声がなければ本当にライヴ録音なのかと疑ってしまうレベルです。

映像は YouTube で検索しても出てきますが、コレは版権大丈夫なんでしょうか…という感じなので、正規のDVDを入手して観ましょう。

YouTube で収録曲をチェックするなら、中でも「The Bash」はぜひとも観てみてほしいですね。超絶技巧のギター&ヴァイオリンが中心となったカントリー風の曲で、演奏は圧巻の一言です。芸術性とエンタメ性がここまで高いレベルで融合している演奏はなかなか聴いたことがないです。

ジャズロック好きにはぜひともおすすめしたい一枚ですね。

‎Aoife Granville – Sáimhín Só (2014)

アイルランドのケリー、ディングル Dingle, County Kerry 出身のアイリッシュ・フルート奏者、イーファ・グランビル Aoife Granville。フルート奏者であると同時にシンガーでもあり、またフィドルの演奏もされるそうです。

1セット目のリール「Kitty Gone a Milking / The Abbey / Come Up to the Room I Want You」から流れるような軽快な演奏です。メジャーからマイナー調になってまたメジャーに戻るのもいいですね。2セット目「Stephen Carroll’s Polkas」はフルートとバウロンによる素朴な響きのポルカ。

3セット目のジグ「The Mouse in the Kitchen / The White Blackbird / McKenna’s」は本作のハイライト。軽やかで非常に楽しいセットです。ギターとウッドベースによる伴奏も素晴らしいですね。

4セット目「Maidin Luain Cincíse」は彼女自身のヴォーカルが聴ける曲で、これも美しいトラックです。5セット目「The Mountain Top / The Wind That Shakes the Barley」はティン・ホイッスルによる演奏。フルート奏者がホイッスルを演奏することは多いですが、これもかなりいいです。

7セット目「The Midnight Hornpipe / The Drummerkane / Maid On the Shore」はホーンパイプからリールへと移るセットで、ハープによる伴奏です。ゲストミュージシャンが多彩なのもこのアルバムの聴きどころでしょう。

10セット目「Réidh Chnoc Na Mná Duibhe / Tom McElvogues」はエアーからジグへと続くセット。エアーのフルート独奏がとてもいいです。

ラストの14セット目はマーチのセット「Kay’s Bóithrín / The Days That Are Gone」で、マーチングのスネアの伴奏にホイッスルの演奏が重なります。後半はホイッスル2本による演奏。少し憂いを帯びた感じのマーチですが、非常にいい曲ですね。

本作は間違いなくアイリッシュ・フルートの名盤で、多彩なゲストミュージシャンによる演奏もあってアイリッシュ初心者にもおすすめできるアルバムです。