悲しみも虚しさも放っておけ

悩んでるほうが普通

「物事には何でも原因があり、原因があるなら対処可能なはずだ」と考える人がいます。それはそうかもしれませんが、世の中の現象というのはだいたい複雑すぎて単一の原因では説明しきれないものです。何でもスッキリ単純に説明が可能で、決まった手順で解決できるのだと思うのは現実に即しておらず、逆にストレスの原因になる可能性があります。

生きていると、特に理由がないのに悲しいとか虚しいと感じることがあります。私がこれを書いている今日の朝は、特に暑くも寒くもない、客観的に見れば気持ちのよい晴れた秋の日の朝でしたが、私は目を覚ましてからしばらく「私の人生ってなんもないよな」という強い実感についてベッドの上で考えていました。こういう日は別に珍しくもありません。

人間というのは、何かに悩んでいる状態のほうが普通です。学生のうちは周囲の人間関係と将来の不安に悩みますし、働き出せばまたもや人間関係があり、ストレスがあり、キャリアの不安も出てきます。人間関係だとか人生設計という話は、確かにそれ自体、真剣に考えるべき事柄です。ですが、目の前の問題を解決したら悩みがなくなるのでしょうか? そうではないですよね。きっと次の問題が出てきます。

「これさえなければ幸せなのに」というのは誤った考え方であり、自分自身を苦しめる心の習慣です。悩みがない状態というのは基本的には存在しません。人生は完璧にはなり得ません。ないものをあると思い込めば、それは永遠に手に入らないので、ずっと不満が続きます。

人の気持ちというのは、自分が思っているよりもずっと身体的なコンディションに左右されます。寝不足で機嫌がいい人などいません。理由もなく調子が乗らない日があり、理由もなくやる気の出ない日があります。そうならば、存在しない解決方法を求めてモヤモヤし続けるよりも、おいしいものを食べてよく寝るとか、問題を棚上げにして散歩してくるとか、そういうことをしたほうがずっと理にかなっているわけです。

冬が来れば春が来るし、夜が来れば朝が来ます。冬に対して「なんでこんなに寒いんだ」とキレても何にもなりません。気分というのは落ちるときは落ちますし、回復するときが来れば回復します。自分の心だから自分でコントロールできる、ということはないのです。

訓練している人のほうが有事に強い

とはいえ、できることが何もないわけではありません。普段からやっておけることとして、知識をつけるということと習慣をつけるということの2つがあります。

心理学的な知識はわりと大切です。たとえばモノを買うことによる満足感はほとんど一瞬で、旅行のような経験にお金を使ったほうが満足度は高い傾向があるという事実を知っておけば、虚しさを感じたときに高い買い物で心を埋めようとしてしまう確率は減ります。また、意外にも異性のパートナーがいる人よりもいない人のほうが幸福度は高い傾向があるという研究結果もあります。これを知っておくと、彼氏/彼女がいないから孤独感があるんだ、という考え方が少し変わってきます。

知識には即効性がないので、これに関しては普段からいろいろ読書したり人の話を聞いたりして、自分の見識を広げるということを意識しておくといいと思います。何事も普段から訓練している人のほうが有事には強いです。ネットで「悲しいとき 対処法」などと検索すると、まあ間違ってはいないけどそういうことじゃないんだよな、みたいな内容ばかり出てきますよね。単純なノウハウとしてすぐに書き表せる解決策っていうのはそういうもので、あんまり役に立たないんです。

習慣的な行動もまた有効です。よく眠る、ちゃんと食べる、身体を動かすといったことは、ありきたりですが確かに精神状態に対してプラスの効果があります。人と会うことも、心に対しては栄養になります。そのためには普段から人間関係を構築して維持する必要がありますし、これはそれなりに労力のかかることです。また、身体を動かすという習慣をつけていれば、日常的に気分転換する上ではかなり強力に働きます。これは近所をウォーキングするといった程度のことでもよいのです。

できないことをなんとかしようとしない

現実的にできることを少し書きましたが、基本的な姿勢としては、「できないことをなんとかしようとしない」というのがポイントです。気分は気分であって、なんとかしようと思ってなんとかなるものではありません。

虚しいっていう感覚はけっこう大切なサインで、先に書いたように特に理由がなくても起きることはありますが、何か自分にとって本当に大切なものを大切にできていないときだとか、何か人生が間違った方向に進んでいるときに、それに気づかせてくれるものでもあります。

充実した人生にする、人生の意味を見つけるというのは、確かに簡単なことではありません。それが簡単なことであるはずがないんです。日々の悲しみや虚しさについては、あまりそれにとらわれず、過度に重要視しないのがいいと思います。頑張っていれば自然と人は成長するものです。落ち着いてやっていきましょう。

関連記事

近い話

少し離れた話