勝手に我慢して、限界が来ると爆発する人の話

それは何の前触れもなく

私自身にもそのような傾向はあるのですが、「勝手に我慢して、限界が来ると爆発する人」というのがいて、周りの人にとっては少し困った存在になることがあります。何か「相手のココが嫌だな」と思っているのですが、それを指摘したりすることはできず、かといってうまく受け流したりすることもできず、我慢に我慢を重ねてしまい、最後には爆発してしまいます。

爆発というのは、ものすごい勢いでキレてしまったりとか、何も言わずにブチっと縁を切ってしまったりとか、とにかく何らかの極端な行動という形を取ります。ただ、相手からしてみればそういう行動を取られるまでに何のサインも前触れも警告もありませんから、当然相手は困惑することになります。この間まで笑顔で接してくれていたと思ったのに、どうして?

同じ場所に複数の人間がいて、何もかもが摩擦なく進むということはまずないですから、お互いに何か思うことがあるというのは普通のことです。そういう中で必要となるのが、説明と対話です。言わなくても伝わるということは基本的にありません。あったとしても、それは他人に対して常に期待すべきではないことです。

伝えることにはスキルが要る

これは「自分の中に溜め込んだりせずにちゃんと言おうね」というアドバイスになるのですが、爆発してしまいがちの人が、これを聞いたからといってすぐにできるようになるとは限りません。すぐにはできないことのほうが多いでしょう。人付き合いというのは、習慣とスキルでできているので、頭で理解したからといってすぐにできるようなものではないからです。

自分が相手の行動の中にある何かを嫌だなと感じていて、それを改善してほしいと思っている。ここには「ネガティブな感情を抱いていることを表に出す」ということと、「相手に改善してほしいことを要望する」というふたつの要素があって、これはどちらも容易ではないことです。ネガティブな事柄にはできれば触れないでおきたいし、人に何かを指摘したりお願いしたりするのは心のエネルギーを要することです。

こういう場合のわかりやすいテクニックの例として、「感謝を伝えて、改善してほしいことを伝えて、再び感謝で締める」という話し方があります。私はあなたに敵意があるわけではないし、責めたいわけでもないんだよ、ということを明確に伝えるわけです。ただ、感謝というのは改まって言うには少し恥ずかしいことがありますし、大げさに言えば逆に嘘くさくなるという性質があります。そのため、これを自然にさらりと伝えるには、ある程度の慣れと技術が必要になります。

認識することが第一歩

心理的な成熟を測るための物差しとして、「曖昧なものを許容できるか」という点があります。爆発してしまう人は、だいたいにおいて極端な立場や行動を取りがちです。我慢するということの心理的な背景には、「常に仲良くやらなければならない、ネガティブなことは決して出すべきではない」という強い信念があります。そして、最終的に爆発するときには精神的な無理が重なってタガが外れていますから、結果的にすごく非常識な行動となって現れがちです。

最初の信念は、どちらかというと人に迷惑をかけないようにしようという配慮によるものですから、これが最終的に周りの人を困らせるような行動として現れてしまうのは、皮肉なことだと思います。ある極端から、反対側の極端へと振れてしまうわけです。ここで取るべき立場は、その中間にあります。それが冷静に伝えるということです。自分はちょっと気を遣うし疲れるし、相手は少し動揺してしまうかもしれないけど、それでも言葉で伝えるという手段に出ることです。

もしあなたが「自分は爆発してしまうタイプだな」と感じたなら、それを直すことは手のかかる作業になると思います。誰だって、人に迷惑をかけたいと思ってかけているわけではないし、直せるならば直したいと思っているはずです。先に述べたように、これは心理的な習慣とスキルが絡む問題なので、わかっているから直せるというものではありません。

ただ、何かを「自覚する」ということは、それを直すための最初の一歩です。自分のまずいところというのは認めたくないものですが、それを認められたなら、大きな一歩を踏み出したことになります。

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