「学ぶ」の語源は「まねぶ」、つまり「真似」のことだという説があるそうです。幼い子どもであれば、周囲の大人たちの言うことを少しずつ真似することで言葉を覚えますよね。美術ならば名画の模写は上達に効果がありますし、楽器を弾くときにも上手いプレーヤーの演奏をコピーすることには意味があります。
偉大な作家でも音楽家でも、完全にオリジナルな存在というのはいません。文学や音楽史に詳しい人ならば、この人物が強く影響を受けているのはこの時代のこの人とこの人だな、といったことを言い当てることができると思います。
これは何も、芸術に限った話ではないと思います。「人の人格は、その人の周りの最も近い位置にいる5人の平均である」という言葉を聞いたことがあります。私の見解はこれより広くて、人が影響を受けるのは5人どころではないし、現在近くにいる人だけではなく過去に関わった人からもちゃんと影響を受けているはずです。現実の知り合いだけでなく、本で読んだ偉人であったり、大好きなフィクションの中の登場人物であることもあります。
私はこうして自分の考えを文章として書いていますが、思想的なバックグラウンドとして誰がいるのかというのはすぐに挙げることができます。何かを語るときには音楽やコンピュータの話でたとえ話を出す癖があって、これも私の中の引き出しです。私という存在は、自分が素敵だなと思ったもの、鋭いなと思ったもの、おかしくて笑えるなと思ったものの寄せ集めでできています。
人の長所はどんどん拝借するといいと思います。他人に対する上手い気遣いを見つけたなら、具体的にそのまま真似てみましょう。思想や芸術的な表現に関することであれば、形式を真似るのではなく、エッセンスだと感じられるものを自分の中に取り込むといいと思います。同じ人間はいないので、最終的な表現は、元になった人とは異なるものになるはずです。
みんなの長所を組み合わせて、自分だけのスーパー長所人間になってください。
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