好きなことと向いていることは違う場合がある

私が何年も楽器に打ち込んできた結果としてたどり着いたのは、残念ながら「なるほど、自分には才能がないのか」という結論でした。ここで得られた教訓は、好きなことと向いていることは違うことがあるんだな、ということです。

鍛錬せずに物事が身につくことはないので、もちろんちゃんと練習しました。仕事帰りの公園で毎日練習して、休日にも近所に出かけて練習して、人前でのライブも積極的にこなしました。そうした積み重ねを何年も続けました。でもね、いつまで経ってもミスタッチはなくならないし、私には歌心っていうのが根本的に欠けているんですよねえ。

何かが好きだというとき、実現する方法はひとつじゃないです。絵を描くことが好きな人がいたとして、画家として食っていくというのは、客観的に見てかなり高いハードルです。ただ、芸術の分野の多くには、プロ志向から趣味のレベルに至るまで、講師の仕事が存在しています。美的センスを活かしたデザイナーのような仕事は、経済の中ではもっと一般的な仕事です。画材が好きなら、画材屋さんもあれば、そこに並んでいる製品を作っているメーカーもあります。

こうした会社の中には営業も事務もあるので、柔軟な発想を持ちさえすれば、好きなことに関わって仕事をするというのは、実はそんなに難しい話ではありません。何が好きかということを業界に合わせて、何に向いているのかというのを職種に合わせるというわけです。それは東京か、ある程度大きな地方都市だけの話では? という指摘はあって、確かにそういう面はあります。ただ、「好きを仕事にする」というのが完全に不可能だと諦める必要もないということです。

私は残念ながら、大好きな音楽を仕事に関係させることはできませんでしたが、そこまで嫌いなことを仕事にしてきたつもりもないので、これはこれでよかったのかなと思います。

現実はままならないものですが、現実を楽しくしていく方法は、やり方次第で無数に存在します。仕事も生活も、なるべく工夫して楽しくしていけるといいよねって思います。

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