うつ病で辛い時、苦しい時には – 対処法のヒント

うつ病、辛いですよね。病気が辛くて辛くて仕方がないとき、一体どうしたらいいのでしょうか。今回はその辺りについて考えてみましょう。

回復を信じる

うつ病になってしまうと頭をかすめるのが「もう治らないのではないか」という思いです。これは非常に生々しく、現実味を持って感じられる感覚です。しかし、信じてほしいのですが、うつ病は服薬と休息と回復します。回復を信じて、まずは休んでください。

うつ病での苦しみにはさまざまな段階が存在します。まず、初めてうつ病を発症したというケースです。メンタルの病気という初めての経験には、きっと戸惑うことでしょう。困ったことに、この「不安になって当然」なシチュエーションに、「病気の症状としての不安」が重なります。この先どうなってしまうのか? 本当に回復するのか? あなたが不安になるのも当然のことです。

次に、うつ病を再発させてしまったというケースです。このケースでは、ある程度症状への対処法や回復への道筋が分かっているので、少しは楽になる部分もあります。しかし、別の苦しみがやってきます。再発させてしまったということで、「今後もさらに再発させてしまうのではないか」「もうずっと治らないのではないか」という思いが前よりも現実味を持って感じられるのです。

どちらのケースでも、希望を失わないことです。あなたの絶望感は、病気が作り出している症状であって、実際には回復という未来が待っている可能性があります。回復を信じて待ちましょう。

対処法のあれこれ

とは言っても、四六時中前向きな気持ちでいるというのは難しいことです。辛くて辛くてしょうがないとき、どのように対処すればよいのでしょうか。

ひたすら眠るという方法は一つの対処法です。とにかく眠るのです。生活リズムの乱れを懸念される方もいるかもしれませんが、私は強烈な辛さと睡眠のリズムを天秤にかけるとしたら、リズムの乱れは許容して、強烈な辛さに対処することを優先してよいと思います。生活リズムが整うのは、おそらく回復の中期から後期にかけてです。回復の初期など、辛さが前面に出ているときは、眠れるときに眠れるだけ眠ってしまいましょう。

散歩するというのもよい方法です。身体を動かすというのは、頭の中のモヤモヤを空っぽにしてくれる効果があります。もしあなたがまだ症状の強い時期にいたら、昼間の日光に当たるのすら辛いという状況であるかもしれません。そのような場合は無理する必要はありません。元気に散歩ができるかというのは、回復の程度を見る上でも目安になってきますから、元気が出てきたら積極的に散歩するようにしてみましょう。

趣味の時間を過ごしてみるというのもよいでしょう。おそらくうつ病の症状が強い時期には、それまで楽しかった趣味がまったく楽しく感じられなくなっていることでしょう。これも先に挙げた散歩と同じで、徐々に試していくとよい項目です。「仕事を休んでいるのに後ろめたいな」などと思う必要はありません。あなたの趣味が映画を見ることであれ読書をすることであれ、おそらく初めのうちは集中力が落ちていることにびっくりされるはずです。趣味を元気に楽しめるかという点も回復の程度を見る上での目安になってきますから、定期的に趣味の時間を持つということはよいことです。

仲間を見つけるということも、辛さに対処する上ではよい方法です。この記事の筆者はうつ病の経験者です。今、この記事を読んでいるあなたは、うつ病の経験者である筆者と間接的にではありますが繋がっています。Webサイト上やSNS上などで、経験者の発信する情報を探してみるとよいでしょう。「仲間がいる」という感覚はあなたに安心感を与えてくれます。また、本格的に復職を検討する段階になったら、リワークなどの利用を検討してみるとよいでしょう。同じように病気を経験しながら復職を目指すという仲間の顔を見ながら頑張ることができます。

おわりに

私はこの記事の他にもうつ病関係の記事をたくさん書いているので、よろしければそちらも参考にしてみてください。

うつ病になってしまった人は、出口のないトンネルに入り込んでしまったように感じられることがあります。しかし、出口はあります。今はそれが見えないだけです。

あなたがうつ病という辛い病気をどうにかやり過ごし、回復へと向かっていくことを願っています。

うつ病で再発を繰り返してしまう人へ – 予防のヒント

うつ病は再発率の高い病気として知られています。一回で治ってしまうこともありますが、再発を経験してしまうこともあるでしょう。今回はうつ病の再発について考えてみたいと思います。

自信をなくさないで

おそらくうつ病の症状としてあまり注目されていないにも関わらず、本人に非常に重くのしかかっているのは自尊心の低下なのではないでしょうか。自尊心とは、自分は価値のある人間なんだ、いろいろな長所があっていろいろなことができる人間なんだという感覚です。

うつ病の症状の酷いときであれば、当然「病気の症状として」前向きな気持ちは失われます。しかしながら、うつ病で仕事に穴をあけてしまった、復職したのに失敗してしまったという経験は、病気の症状としての一時的な自尊心の低下ではなく、症状が治ったあとも続く長期的な自尊心の低下に繋がりやすいのです。自分はダメな人間だ、社会でうまくやっていけない人間なんだ、と本気で思ってしまうのです。

これを読んでいるあなたがうつ病の再発を繰り返してしまう当事者であるなら、どうか自信をなくさないように、治るという望みをなくさないように希望します。うつ病という病気はあまりにも強力で、まるで天災のようなものです。あなたはそれに抗うことができなかったかもしれませんが、それはあなたのせいではありません。

ご存知のように、うつ病は希死念慮(死にたいと思う症状)の出る病気です。普通の人が死にたいと思ってしまうほど苦しい病気なのです。自信をなくすな、希望を持てと言われても、それはおそらく相当に困難なことです。しかし私は繰り返しますが、あなたが自信と希望を失ってしまわないように望みます。

回復のステップはトライアンドエラー

うつ病というのは病気の症状だけでも苦しい上に、それが非日常的な経験であるからなおさら戸惑うのです。仮にうつ病で休職して復職したあと、再び体調を崩して再休職をしてしまった人がいるとしましょう。この人は「また失敗してしまった」と思って絶望してしまうかもしれません。しかし、正確にはこれは違います。「うつ病からの最初の復職」という、生まれて初めてする経験での失敗なのです。

それがどんな経験であれ、初めて経験する出来事を失敗せずにこなすということは難しいことなのです。うつ病からの復職も同じです。ましてや、うつ病から復職した人というのは病み上がりの身です。普段よりも調子の悪い状態で、初めて行う経験にトライするのです。これでは最初から上手くいくほうが珍しいと思いませんか。

そういうわけで、うつ病からの回復のステップはトライアンドエラーになります。一発ですっきり回復するようなイメージは持たないほうが無難でしょう。あなたはうつ病という大きな苦しみを背負った上で、なぜ回復の過程にまでこんなに苦しまなければならないのかと思うかもしれません。病気というのは理不尽なものです。それでも私たちは前を向いて生きていく必要があります。

おわりに

私は以前、「うつ病でも無理なく仕事を続けるコツ」「うつ病と転職、退職」といった記事を書いたことがあります。よろしければそちらもご参考にしてみてください。

うつ病の再発というのは大変に苦しい問題です。自信と希望をなくさないで、というのは本文中で述べたとおりです。あなたがうつ病という苦しい試練を乗り越えて、前向きな人生を掴んでいくことを願っています。

うつ病とは何か – 原因と症状、接し方

うつ病は誰でもかかりうる病気ですが、その原因を分かりやすく、簡単に説明することは容易ではありません。今回はそんなうつ病について解説してみたいと思います。

うつ病とはどんな病気か

うつ病の主な症状にはさまざまなものがあります。気分の落ち込み、疲れやすさ、意欲や興味が湧かなくなること、不安や焦燥感、眠れなくなること、といった症状です。これらの状態は確かに、健康な人でも起こることはあります。ショックな出来事があれば落ち込むでしょうし、ときには眠れないこともあるでしょう。

うつ病を特徴付けるのは、これらの症状が持続的であるということです。具体的にはこのような症状が2週間以上続く場合、と言われることがあります。また、その症状の程度が日常生活に支障をきたすという点も特徴です。健康な人は落ち込むことがあっても、それが何週間にも渡って続くことはないでしょうし、仕事にまったく手がつかなくなるということもないでしょう。持続的で日常生活に支障をきたすという点、この2点がポイントです。

最初に挙げた症状を簡単にまとめると、うつ病の症状はエネルギーの欠乏と、それにも関わらず休息ができないことの2つに分けられると思います。うつ病の当事者は、何もする気が起きない、することができないといった活動能力の低下とともに、かといって安心して休むこともできないという非常に苦しい立場に置かれるのです。

その原因は

うつ病の原因は長期間に渡る強いストレスであることが多いですが、これはそれほど単純な話ではありません。うつ病の発症には、本人の気質、周囲の環境など、さまざまな要因が絡んでいます。表面上は同じ出来事に遭遇したように見える人も、ある人はうつ病を発症するかもしれないし、ある人はうつ病を発症しないかもしれません。単一の原因が指摘できることはむしろまれだと考えたほうがよいでしょう。

「○○が原因でうつ病になったのだ」という原因探しは、あまり現実的ではありませんし、あまり治療的でもありません。うつ病の原因に「何らかのストレス」が関わっているということは、おそらく間違いではありませんが、ストレスという外部からの刺激を単純に説明することは難しいですし、ストレスを受ける本人の気質や環境といったものも簡単に説明するのは難しいものです。

もしあなたがうつ病について調べたことがあれば、「脳内の神経伝達物質のバランスの乱れ」といった説明を読んだことがあるかもしれませんが、これもあまり腑に落ちる説明ではなかったでしょう。これはちょうど、食あたりのことを「胃や腸内環境のバランスの乱れ」と説明するようなものだからです。これでは肝心の「何を食べたから食あたりになったのか」という点についての説明になっていません。しかし、うつ病についての現代の科学的な説明は、これと同じように明快な原因について語ることができないのです。

本人への接し方は

周囲にうつ病になった人が現れた人は、おそらくどのようにして接したらいいのか戸惑うことでしょう。しかし、考えてみてください。それがどのような病気の人であれ、「○○の人への接し方」という単純明快な指針を示すことは可能でしょうか。おそらくそれは難しいと思います。ここでも、単純明快な答えはありません

しかし、いくつかのヒントを示すことはできます。まず、うつ病の人は非常に自責的になっているということを覚えておきましょう。多くの物事に対して、自分が悪い、自分のせいだ、と思い込むということです。

たとえばうつ病で仕事を仕事を休職してしまった人がいるとしましょう。この人は「たくさんの人に迷惑をかけてしまった、もう死ぬしかない」と考えるかもしれません。これは健康な人から見ると、明らかに思考の飛躍のように思えますが、うつ病の人は実際にそう考えうるのです。周囲の人は、「あなたは悪くない」というメッセージを伝える必要があるかもしれません。

次に、うつ病の人はあまりにも深刻なエネルギーの欠乏状態に陥っているという点です。これも健康な人には想像が難しいかもしれません。外出してコンビニに行くといったことはもちろん、場合によっては机の上のゴミをゴミ箱へ入れることすら難しいのです。うつ病の人が何かを「できない」という状態になったら、それは「本当にできない」ということです。やろうと頑張ってもできないのです。こうした場合には、周囲の人がなるべくサポートに回る必要があるでしょう。

うつ病の人に「頑張れ」は禁句だ、という話を聞いたことがある人もいるでしょう。うつ病の人は多くの場合、自らの心身の限界を迎えるまで頑張ってしまった人であり、「もうこれ以上頑張れない」という心身の悲鳴がうつ病という病気の発症なのです。

さらにもう一つヒントを挙げるとすると、うつ病というものは回復に時間がかかります。逆に言えば、時間さえかければ回復しうるということでもあります。うつ病となった本人は、悲観的な思考と不安の症状によって、「もう治らないのではないか」などと考えがちです。回復への希望を持って見守る、というのは周囲の人たちの大切な仕事です。おそらく時間はかかりますが、うつ病は回復します。周囲の人たちも、過度な不安に飲み込まれないようにしましょう。

おわりに

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。私は他にもうつ病関係の記事を数多く書いているので、ご参考にしていただければと思います。

もしあなたがうつ病になってしまったご本人なら、今はどうか回復を信じてゆっくり休んでください。もしあなたがうつ病になってしまった人のご家族や職場の関係者などでしたら、やはり回復を信じてください。

最後に、ご本人の周囲の方へ。周囲の方がこのようにうつ病について勉強してくれるということは、本人にとって非常に大きな力になります。どうかうつ病に関する理解を深めていただければ幸いです。

うつ病と転職、退職

うつ病にかかってしまった場合、転職や退職といった選択肢が頭をかすめるかもしれません。今回はうつ病と転職、退職について考えてみたいと思います。

セオリーは「先延ばし」

あなたは現在、うつ病の症状がある状態でしょうか。夜眠りにくかったり、不安や焦燥感といった症状が出ている状態でしょうか。

もしあなたが休職中で、まだうつ病の症状がある程度出ている状態でしたら、セオリーは「先延ばし」です。あなたはまだ、うつ病という病気の症状に圧倒されてしまって、冷静な判断ができない可能性があります。症状が良くなるまで、さしあたり転職や退職といったことについて考えるのはやめておきましょう。

うつ病の症状が良くなるには、一般的に3ヶ月〜6ヶ月程度かかると言われていますが、それ以上かかる場合もあります。私はうつ病関係の記事で繰り返し述べていますが、うつ病の治療は長期戦です。まずは転職や退職といったキャリア関係のことは置いておいて、体調を元に戻すことを第一に考えてください。

「会社に迷惑をかけてしまった」などという理由で退職を考えてしまう場合も、いったん保留にしてください。うつ病はあなたにとっては大ごとですが、会社組織といったものにとっては「よくある出来事」です。自分を責めないでください

それでは体調が良くなってきたとき、元の会社に復職するべきでしょうか。それとも転職を行うべきでしょうか。

セオリーは「元の職場へ」

ここでもおすすめされるのは転職ではありません。元の職場に戻るのがセオリーです。

転職といった環境の大きな変化は、心身に思わぬ負担をかけるものです。そしてうつ病から回復した人というのは、一時的に社会的な免疫とも言うべきものが大きく落ちている状態になります。健康な状態ならば耐えられていたストレスにも、今は耐えられなくなっている可能性があるのです。この状態で転職という環境の変化を引き起こすのは、非常にリスキーです。

うつ病を発症した理由として、仕事上のストレスが原因だったでしょうか。もしその場合、今の会社に在籍していることはそのままにした上で、無理なストレスを減らすよう、会社との業務調整に当たるようにしましょう。仕事の調整というものが「言うほど簡単ではないこと」を私は知っています。ですが、それでもやる必要があります。

転職や退職を考えるべきなのは、会社がいわゆるブラック体質で、業務調整に応じてもらえない場合です。常識的な会社であれば「人には無理なことがある」「人は無理なことを無理と言う権利がある」ということを分かっているものです。業務調整の要望というものは、職場の都合もあるので何でも通るわけではありませんが、会社側にあなたの意思と健康を尊重する姿勢があるかどうかはよく見極めたほうがよいでしょう。

再発を繰り返してしまう場合は

先に述べたように、うつ病で転職や退職を考えるべきなのは、会社側に明らかな問題があった場合です。しかし、もう一つ考えるべきケースがあります。あなたがうつ病を何度も再発させてしまった場合です。

これは判断が難しいことですが、再発を繰り返してしまう場合、職場や職種というものが根本的な部分であなたに合っていない可能性があります。こういったケースでは、転職や退職を視野に入れるべきかもしれません。

繰り返しますが、ここでも体調を戻すことが第一です。体調を戻して、冷静な頭で物事を考えられるようになったら、キャリアの転換について考えましょう。これもまた大変に難しい話です。病気という現実を前にして、「どうして自分がこんな目に遭わなければいけないんだ」と思うかもしれません。それでも、あなたはどうにかして生活していく必要があります。

おわりに

うつ病というのは人生における大事件であって、遭わずに済むのならそれが一番よいでしょう。しかし、遭ってしまったからには仕方がありません。

世の中にはうつ病というマイナスの事件をきっかけに、生き方や働き方を見直すことができた、というプラスの変化を引き出すことになった人も数多く存在しています。あなたがうつ病という病気を乗り越えて、よりよい生き方に到達できることを願っています。

入門編: 長澤知之の名盤を探る

福岡県出身の個性派シンガーソングライター、長澤知之。ベストアルバムのレビュー記事でも触れましたが、彼は多作なアーティストです。そんな彼のディスコグラフィから、入門盤としておすすめな3枚についてセレクトしてみました。

JUNKLIFE (2011)

1stフルアルバムです。長澤知之はエレキギターを全面に出したロックサウンドと、アコースティックで繊細な側面を併せ持っていますが、本作はバンドサウンドで前者の傾向が強い作品です。

Tr.3〜Tr.5の「THE ROLE」「JUNKLIFE」「EXISTAR」はそんな彼のロックンロールサイドを代表する名曲でしょう。この詩的な世界観とバンドサウンドの組み合わせは比較的初期の作品に顕著です。

Tr.9「MEDAMAYAKI」も疾走感溢れるロックンロールナンバー。ラストのTr.14〜Tr.15「三日月の誓い」「回送」はバラードで、非常に美しい曲です。

長澤知之III (2014)

当初はライブ会場限定で販売されていた3rdフルアルバム。ややアコースティックなバンドサウンドとなっているアルバムです。

Tr.1「只今散歩道」から軽快で明るいナンバーでスタートします。Tr.2「享楽列車」も明るいというほどでもないですが、どこか前向きな曲。

Tr.4「犬の瞳」はなかなかすごい曲です。バイノーラル録音という手法で録音されており、イヤホンで聴くと自分の周りの360度から音が聴こえてくるような仕組みになっています。洪水のように溢れ出すコーラスが印象的です。

Tr.5「シャウト」はアコースティックサウンドをメインにしたロックンロールという面白い曲です。Tr.8「そこぬけ」はユーモアを感じさせる曲。

ソウルセラー (2019)

ミニアルバムとしては7枚目の作品。アコースティックなナンバーのみで構成されている作品です。はっきり言って大名盤だと思います。

この作品については個別でレビュー記事を書きましたのでそちらをご覧ください。