入門編: LFO の名盤を探る

イギリスの名門レーベル、Warp Records の主要アーティストである LFO。シンセサイザーの強烈な音色を武器にした、ブリープ・テクノ Bleep Techno と呼ばれるジャンルの開拓者として知られるテクノユニットです。

メンバーはマーク・ベル Mark Bell とジェズ・ヴァーレイ Gez Varley の2人です。キャリアの後半ではジェズがグループを脱退し、マークのソロ・プロジェクトとなりました。

今回はそんな LFO の名盤について探ってみたいと思います。

Frequencies (1991)

彼らの1stで、ブリープ・テクノというジャンルを定義づけたと言っても過言ではない名盤です。荒削りな打ち込みのドラムに、芯の太いシンセサイザーの低音が乗ったサウンドとなっています。

6曲目の「We Are Back」で主張されるメッセージはなかなか強烈です。ヴォコーダーによる音声で「There are many imitators, but we are the true creators」(大勢の模倣者が存在するが、我々は真のクリエーターだ) と宣言されるのです。

少しアシッドっぽい、うねりの利いたシンセの音色も魅力的ですね。90年代前半のテクノシーンを象徴する作品だと思います。

Advance (1996)

1996年の2ndアルバム。1stと比べるとシンセのキラキラした音色が目立ち、空間の広がりを意識させる洗練された音作りとなっています。

このアルバムを特徴づけているのはドラムの荒々しい使用でしょう。2曲目「Shut Down」ではバスドラム、ハイハット、スネアの音色がいずれも強烈で、ドラムが主旋律を作っていると言ってもいい曲です。ベースの音色もかなり攻撃的です。

アルバムの中心に座る曲は5曲目の「Tied Up」。こちらもドラムの激しい音色を中心とした音作りとなっており、まさに彼らにしか作れないナンバーとなっています。

Sheath (2003)

ジェズが脱退し、マークのソロ・プロジェクトとなった2003年の3rdアルバム。マーク・ベルは2014年に43歳の若さで亡くなっているので、本作が LFO の最終作となっています。

サウンドのきらびやかさ、存在感のある低音、攻撃的なドラムと、これまでに彼らが見せてきた音作りが最も進化した形で示されています。彼らの作品としては1stを最高傑作と見る向きもありますが、私は本作が彼らの最高傑作なのではないかと思います。

全体的に音圧がものすごく、何重にも重ねられた音作りは過去になかったレベルとなっています。特にドラムの打ち込みなどは、人間がドラムセットで演奏することを前提としない重層的なものとなっており、マークの独自のセンスが光ります。

アルバムの中心となるのは8曲目の「Freak」。1stでも見られたヴォコーダーが再び使用されており、執拗に積み重ねられたドラムはまさに音の洪水とも呼べるサウンドを作り出しています。

おわりに

LFO の全アルバムである3枚の作品を紹介してみました。個人的には、どの作品から聴いてもハズレはないのではないかと思います。

クラシックなテクノの作品に馴染みのある方は1stから順に聴いていってもいいですし、現代的なサウンドのテクノが好きな方は3rdから逆順に聴いていくのもよいでしょう。

テクノの一時代を築いた LFO のサウンドを、ぜひお楽しみください。

入門編: St. Vincent の名盤を探る

アメリカのシンガーソングライター、セイント・ヴィンセント St. Vincent ことアニー・クラーク Annie Clark。かのデヴィッド・ボウイ David Bowie にも例えられるほど多才でアーティスティックな面を持つ彼女ですが、そんな St. Vincent の名盤を探っていってみましょう。

Marry Me (2007)

2007年の1stアルバム。みずみずしい歌声とアコースティックなサウンドで、彼女の入門盤にうってつけの作品です。タイトルトラックの「Marry Me」は「Marry me, John, marry me, John / I’ll be so good to you」と歌う美しい曲です。

Actor (2009)

2009年の2ndアルバム。作風としては前作の延長線上にあると思います。1stと同じく、ジャケットアートワークが美しいですね。1曲目の「The Strangers」はシンプルな音作りの曲で、それだけにヴォーカルの魅力が映えています。

Strange Mercy (2011)

2011年の3rdアルバム。ややエレクトリックな面が打ち出された作風となっています。2曲目の「Cruel」は彼女自身によるエレキギターの演奏が素晴らしい曲です。

St. Vincent (2014)

セルフタイトルとなった2014年の4thアルバム。この作品もエレクトリックな側面が強いです。5曲目の「Digital Witness」は力強いドラムとシンセサイザーの使用が面白い楽曲。

Masseduction (2017)

2017年の5thアルバム。タイトルの「マスセダクション」とは彼女による造語で、インタビュー記事によると「大衆 (MASS) を誘惑する (SEDUCTION)、自分に取り込む」という意味を込めているそうです。2曲目の「Pills」(錠剤) は社会風刺でしょうか。こちらもエレキギターの使用が魅力的で、ミュージックビデオも面白いです。

早期リタイアにはいくら必要? 退職に必要な金額を考える

ネット上ではときどき、「早期リタイアにはいくら必要ですか?」といった相談内容の記事を見かけることがあります。今回は早期リタイアに必要な金額について考えてみましょう。

なぜ必要な金額が分からないのか

逆に考えてみましょう。なぜあなたは早期リタイアに必要な金額が分からないのでしょうか。

最初のポイントは、あなたが自分の支出を把握していないからという点ではないでしょうか。私は過去の記事「貯金と貯蓄の賢い仕方」などでも述べていますが、自分の支出を正確に把握するというのは、お金にまつわる話をする上で最も基本的な点です。支出を把握しましょう。すべてはそこからです。

「何歳まで生きるのか」「大きな病気をすることがないか」といった点は、残念ながら知ることはできません。しかし、現在の預金残高と普段の支出さえ分かれば、とりあえず現在の生活を続けた場合にどの程度のスピードで資産が目減りしていくのかを知ることができます。

Excel等の表計算ソフトでシートを一つ作成し、「年齢」「資産残高」の列を作ってみましょう。また、少し離れた位置のセルに「年間生活費」の欄を作りましょう。1行につき1歳、年を取っていく形で、縦長の表を作成します。1行目には現在の年齢と資産残高を入れて、2行目以降は年齢は前年のプラス1、資産残高は前年から年間生活費を引いた値にします。

もう少し本格的に計算するなら、日本年金機構のサイトから年金見込額の試算を行ってみましょう。先述の表計算ソフトの表では、資産残高から単純に年間生活費を引いていくだけでしたが、ここに年金の受給額をプラスするようにして計算するのです。

このような表計算ソフトでの試算を行うだけで、「ある年齢にある資産残高でリタイアしても大丈夫か」については、かなり具体的にイメージを持つことができます。

あなたが投資を行っているなら

もしあなたが株式のインデックス投資を行っているのなら、話はぐっと簡単になります。想定年利年間生活費さえ分かれば、必要資産額は単純な割り算で出すことができるからです。それは次の式です。

年間生活費 ÷ 想定年利 = 必要資産額

当ブログの過去の記事「インデックス投資の平均利回りはどれくらい?」にも書きましたとおり、米国株式の長期のリターンは年利にして7%程度です。ここではより安全に全世界株式を使用するものと想定して、余裕を見て想定年利は5%としておきましょう。

そしてあなたの年間生活費が仮に400万円だとしましょう。そうすると、必要な資産額は次の式で出すことができます。

400 ÷ 0.05 = 8000

つまり、あなたの年間生活費が400万円で株式の想定年利を5%と見た場合、必要資産額は8,000万円という結果になります。

念のため検算してみましょう。8,000万円を株式で持っているとして、想定年利が5%だとすると、8000×0.05=400で、1年間の株式の平均リターンは400万円ですね。これは年間生活費と一致していますから、株式の平均リターンだけで生活費がまかなえる状態になっていることが分かります。

おわりに

今回の記事では、早期リタイアに必要な金額について考えてみました。一つ目は表計算ソフトで資産の目減りを可視化する方法、二つ目はインデックス投資のリターンで年間生活費をまかなう場合の計算式でした。

二つ目の「インデックス投資のリターンで生活費をまかなう」という考え方は目新しかったでしょうか。もしあなたがインデックス投資をまだ行っていないのでしたら、資産形成のために、可能な限り早めに株式のインデックス投資を始めることをおすすめします。

インデックス投資へのすすめについては、私は過去に「株式投資入門: 簡単で確実な投資の方法とは」という記事を書いているので、あわせてそちらもお読みいただければと思います。

では、夢の早期リタイアに向けて頑張っていきましょう。今回の記事はこの辺で。

発達障害のグレーゾーン問題 – 非定型発達の人々を考える

ASD(自閉症スペクトラム症)やADHD(注意欠陥・多動性障害)に代表される発達障害ですが、この発達障害にはグレーゾーンと呼ばれる人たちが存在します。今回はこのグレーゾーン問題を考えてみたいと思います。

グレーゾーンとは何か

発達障害のグレーゾーン当事者とは、医学的には発達障害という診断がついていないものの、発達障害の傾向をある程度持っている人たちを指します。発達障害の対義語は定型発達です。グレーゾーンの当事者たちは、非定型発達の要素をある程度持っている人たちと言えます。

私は以前、「うつ病とは何か – 原因と症状、接し方」という記事を書いたことがあります。この記事では、うつ病と普通の人のゆううつを区別する観点として、日常生活への支障という線引きを挙げました。

たとえば普通の人でも、イヤなことがあればゆううつになったりはします。しかし、それで仕事にまったく手がつかなくなったり、毎晩眠れなくなるといった事態になることは考えづらいことです。しかしうつ病という病気になると、そういった「日常生活への支障」が現れるのです。

発達障害というものを考える上でも、この線引きは有効であると言えます。個性的な人と、発達障害の当事者を分けるのは、その個性が日常生活への支障として存在しているかという点です。「ちょっとアバウトな人」「うっかり者」は個性と呼べますが、仕事に頻繁に支障をきたすほどケアレスミスが多い人は、ADHDの特性を持っている可能性があります。

それを踏まえた上で、発達障害のグレーゾーンというものを考えると、グレーゾーンの人たちというのは日常生活への支障が「障害」と呼べるかどうか微妙なラインにいる人たちだと言えます。

たとえば、コミュニケーションが苦手で職場に馴染むことができず、転職を繰り返してしまう人の場合はどうでしょうか。これは特定の個性を持つ人が社会に適応していく上で必要な人生経験と呼べるかもしれませんが、ASDを抱える人が必要な支援を受けられずに苦労している状態と捉えることもできるのです。

グレーゾーン当事者の苦しみ

では、グレーゾーン当事者の苦しみはどこにあるのでしょうか。おそらくそれは、就労という現実的な問題と、漠然とした生きづらさという2点にあると思われます。

コミュニケーションが苦手であること、作業上のミスが多いことなどは、仕事上で確かにマイナスと評価される点です。しかし、グレーゾーン当事者たちは、努力が足りないからでもなく、注意が足りないからでもなく、元々の性質としてそのような困難を抱えているのです。

仕事がうまくこなせない、人間関係がうまくいかないといった事実は、その人の自尊心の低下に直結します。これは先に挙げた生きづらさを言い換えた言葉であると言えます。

グレーゾーン当事者は、なぜだかうまくいかない、周りに馴染めないといった苦労を抱えながらも、それが障害であるという医学的な「お墨付き」をもらうこともできず、自分はダメな人間なのだという思いに苦しめられるのです。

グレーゾーンへの対策

グレーゾーン当事者の場合、障害者手帳などといった福祉サービスが受けられない可能性があります。私は発達障害の当事者の人生はサバイバルそのものだと考えていますが、グレーゾーン当事者の人生もそれに近いものになるかもしれません。

幸いにも現代では、インターネットや書籍などを通して、ある程度発達障害に関する情報が流通するようになりました。グレーゾーン当事者も、これを利用して自らの困難に対処していく必要があるでしょう。

私は以前「発達障害と職業選択 – 就職、転職で失敗しないために」という記事を書いたことがありますので、よろしければそちらも参照してみてください。またこのブログの「発達障害」タグの他の記事も参考になると思います。

発達障害の当事者の持つ困難は多種多様です。グレーゾーン当事者の持つ困難も同様と言えるでしょう。グレーゾーン当事者の生き方について、単純明快な解決の指針を示すことはできません。おそらく本人が失敗しながら学んでいくしかない部分も数多くあるでしょう。

おわりに

発達障害のグレーゾーン当事者の定義、その苦しみと対策について簡単に述べてみました。おそらくこの記事の情報だけでは、グレーゾーン当事者の抱える苦労への対策としてはまったく不十分でしょう。発達障害に関する書籍やインターネット上の情報などを当たって、あなたが生きていくのに必要な情報を手に入れていってください。

あなたの生きづらさが少しでも軽減することを祈っています。

自分に最適な睡眠時間はどう知ったらいいのか

一般的に健康な睡眠時間は8時間と言われることが多いですが、必要な睡眠時間は人によって異なります。7時間という人もいれば、9時間という人もいるでしょう。

私の知人には、1日5時間も眠らなくても元気に過ごせるというショートスリーパーの人がいます。その人にとってベストな睡眠時間というのは、本当に人によってそれぞれです。

自分にとって最適な睡眠時間を知る方法はあるのでしょうか。今回はその点について考えてみたいと思います。

長期休暇を取ろう

私が発見した方法は長期休暇を取るということです。大型連休を利用して、可能ならば土日+平日5日間+土日で9連休を取ることはできないでしょうか。

連休中は昼間は好きなことをして過ごして、夜は眠りたいと思った時間に眠ります。おそらく連休前半は、仕事の疲れなどで睡眠時間が長くなる傾向があるでしょう。

しかし連休後半になると疲れも解消されて、仕事をすることで日々無意識にしている緊張がほどけてきます。あなたにとってベストな睡眠時間は、この連休後半に「自然に眠って自然に起きる」ときの睡眠時間です。

毎日の仕事で作られた生活リズムは、ある程度人工的に作られたリズムです。長期休暇によって、その人工的なリズムを一度外してみて、自分にとって自然なリズムを見つけるということです。

私はこの方法を使うことで、自分にとって最適な睡眠時間は思ったよりも長いということに気づきました。具体的には、私は9〜10時間眠ったときが最も体調がいいという、いわゆるロングスリーパーであることが分かったのです。

おわりに

この方法は特に、私のような睡眠時間の長い傾向のある人にとっっては有益な気づきとなることでしょう。普段の仕事のある生活で知らず知らずのうちに無理をしていた、ということに気がつけるかもしれません。

では、今回の記事はこの辺で。あなたが健康で快適な生活を送れますように。